順番を待てない・おもちゃを貸せない子への関わり方|年齢別の声かけ
対象の目安: 1〜6歳ごろ

「順番でしょ」と言っても待てない、「貸してあげて」と言っても手放さない。お友達との場面でヒヤヒヤして、我が子だけできていないのではと感じる保護者は少なくありません。でも、自分の思いを主張できるのは心が育っているサインで、貸し借りや順番待ちはこれから時間をかけて身についていくものです。この記事では、無理強いしない年齢別の関わり方と、取り合いになったときの具体的な対応を整理します。
全体像:年齢別の育ちの目安と関わりの軸
貸し借りや順番待ちは、ある日突然できるようになるものではなく、「自分の思いを出す」時期を経て「相手の思いにも気づく」方向へ少しずつ育っていきます。下の表は大まかな目安で、月齢・年齢はあくまで参考です。表れ方には大きな個人差があります。
| 年齢の目安 | 育ちの姿(目安) | 関わりの軸 |
|---|---|---|
| 1〜2歳ごろ | 「自分の物」という意識が芽生える。取られると泣く・怒る | 気持ちを言葉にして代弁し、所有を尊重する |
| 2〜3歳ごろ | 「ちょうだい」「イヤ」など要求を言葉で出し始める | ぶつかり合いを受け止め、短い言葉で橋渡し |
| 3〜4歳ごろ | 「かして」「いいよ」のやり取りが少しずつ増える | 交替・順番の言葉を場面の中で知らせる |
| 4〜6歳ごろ | 相手の気持ちに気づき、折り合いをつけ始める | 待てた・譲れた姿を具体的に認める |
育ちの捉え方はこども家庭庁「保育所保育指針解説」の領域『人間関係』の考え方を参考にしています。年齢区分・呼び方は本記事による目安です。
「貸せない・待てない」は健全な自己主張
まず知っておきたいのは、自分の物や自分の番を主張することは、わがままではなく育ちのプロセスだということです。こども家庭庁の資料でも、子どもの自己発揮と自己抑制が調和して育っていく上で、自己主張がぶつかり合う場面は重要な意味をもつと説明されています。ぶつかり合いをすべて避けさせるのではなく、その経験を通して「自分の思いも、相手の思いもある」と気づいていく、という捉え方です。
順番待ちや我慢は、この「自己抑制」の力にあたります。自己抑制は自己主張よりゆっくり育つことが多く、まだ待てないのは発達の途中として自然なことです。「できない」ではなく「これから育つ」と捉えると、関わりの気持ちも少し軽くなります。
メモ
思いやりや相手を大切にする気持ちは、いざこざやつまずきを体験し、それを乗り越えることで次第に芽生えてくるとされています。トラブルそのものが、社会性を育てる学びの機会になります。
文部科学省「幼稚園教育要領」領域『人間関係』では、葛藤やつまずきを乗り越えることで思いやりが芽生えるとされています。
取り合いになったときの関わり方
おもちゃの取り合いが起きたとき、すぐに「貸してあげなさい」と裁く前に、両方の気持ちを受け止める一手間が力になります。基本の流れは次のとおりです。
- 1
まず安全を確保する
たたく・かむなど、けがにつながりそうなときは体を間に入れて止めます。行為は止めても、人格を責めない言い方で。 - 2
両方の気持ちを言葉にする
「使いたかったんだね」「今は貸したくないんだね」と、双方の思いをそのまま代弁します。まず気持ちが受け止められる経験が土台になります。 - 3
所有と共有を区別して伝える
その子の物なら「これは◯◯ちゃんの物だね」と所有を尊重。みんなの物なら「今使っている人が終わったら交替しようね」と見通しを示します。 - 4
折り合いの選択肢を示し、見守る
「終わったら貸してって聞いてみる?」「別ので遊んで待つ?」と選べる形に。答えをすぐ出さず、子どもが決める余地を残します。
みんなで使う物は「先に使い始めた子に優先権があることが多い」一方で、相手の使いたい気持ちにも気づき、少しずつ交替で譲り合う必要があることを知らせていく、という関わりが公的資料でも示されています。大人が一方的に順番を指示したり、機械的にじゃんけんで決めたりして早く収めるより、自分の要求と相手の要求に折り合いをつける経験そのものを大切にする、という考え方です。
ヒント
順番や「あと何回で交替」が見えにくいと、待つのはより難しくなります。砂時計やキッチンタイマーで「鳴ったら交替」を目で見える形にする、順番を書いた紙やカードを用意するなど、待つ見通しを可視化すると待ちやすくなる子もいます。
「個人の物と皆の物がある」「共同の物は先に使い始めた者に優先権があることが多いが、徐々に交替で譲り合う」等は、こども家庭庁「保育所保育指針解説」領域『人間関係』の記述にもとづきます。
1〜2歳ごろ:所有を守り、気持ちを言葉にする
「自分の物」という意識が芽生える時期です。取られて泣くのは自然な反応なので、この時期は無理に貸させることを目標にしなくて大丈夫です。「取られていやだったね」と気持ちを言葉にして返し、その子の物は所有を尊重します。同じおもちゃを複数用意しておくと、取り合い自体が減ることもあります。
3〜4歳ごろ:交替の言葉を場面の中で
「かして」「いいよ」「順番」「交替」といった言葉のやり取りが増えてくる時期です。ただ、言葉を知っていても気持ちが追いつかないのが普通です。遊びの場面で「かしてって言ってみようか」と実際に使ってみせ、断られることも織り込みながら、言葉で気持ちを伝える経験を重ねます。
4〜6歳ごろ:待てた・譲れた姿を具体的に認める
相手の気持ちに気づき、折り合いをつけ始める時期です。うまく待てたり譲れたりしたときは、「最後まで待てたね」「順番替わってあげられたね」と具体的に言葉にして認めると、その子の中で「できた」が積み重なります。できない日があっても、責めずに次の機会につなげます。
安全・注意
注意
取り合いの中でたたく・かむ・押すなどが出たときは、まずけがを防ぐために止めます。止めるのは「行為」で、「悪い子」と人格を責める言い方は避けましょう。かみつきなどは言葉で気持ちを出しきれない時期に起こりやすく、成長とともに減っていくことが多いとされています。
発達には大きな個人差があり、貸し借りや順番待ちが「何歳でできる」と一律には言えません。年齢の目安はあくまで参考です。友達に関心が向かない、極端に切り替えが難しい、集団の場面でつらさが続くなど、気になることがあれば、乳幼児健診の機会やかかりつけ医、お住まいの自治体の子育て相談窓口に相談してみてください。早めに相談すること自体が、その子に合った関わりを知る助けになります。
つまずき・困ったとき
まわりの目が気になると、つい強く叱ったり、その場で無理に取り上げて謝らせたりしがちです。けれど、気持ちが置き去りのまま謝罪だけを促しても、「なぜ」は伝わりにくいものです。まずは「使いたかったね」と本人の気持ちを受け止めたうえで、「でも今は◯◯ちゃんが使っているよ」と事実を短く伝え、代わりの遊びや順番を一緒に探します。うまくいかない日があって当たり前です。トラブルは失敗ではなく、社会性を練習している最中と捉えて、長い目で見ていきましょう。
よくある質問
おもちゃの貸し借りは何歳からできますか?
無理にでも貸させたほうがいいですか?
取り合いのとき、親はすぐ止めるべきですか?
『ごめんなさい』を言わせたほうがいいですか?
順番を待てず割り込んでしまいます。
きょうだいで取り合いばかりします。
他害(たたく・かむ)が気になります。相談してもいい?
まとめ
貸し借りや順番待ちは、「自分の思い」を出す時期を経て「相手の思い」に気づく方向へ、長い時間をかけて育っていきます。できない今を責めず、気持ちを受け止めながら少しずつ橋渡しをしていきましょう。
関わりで意識したいこと
- まず両方の気持ちを言葉にして受け止める
- その子の物は所有を尊重し、無理に貸させない
- みんなの物は交替・順番の見通しを可視化する
- できた・待てた・譲れた姿を具体的に認める
- 取り上げて謝らせる・強く叱るは避ける
- 気になることがあれば健診・かかりつけ医・自治体の相談へ
自己主張のぶつかり合いは、社会性を育てる大切な学びの機会です。関連する関わり方も、あわせて参考にしてください。
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