子どもの溶連菌感染症|かぜとの見分け方、抗菌薬を飲みきる理由と登園の目安
対象の目安: 3歳〜就学前が中心

急に熱が出て、「のどが痛い」と言う。でも鼻水も咳もほとんど出ていない——溶連菌感染症は、かぜとよく似ていながら、こうした少し違う顔をのぞかせる感染症です。抗菌薬がよく効く一方で、症状が良くなったあとも、決められた期間は薬を飲み続けることに意味がある、という点でも他の感染症と勝手が違います。この記事では、国立健康危機管理研究機構(JIHS)・厚生労働省・こども家庭庁・国立成育医療研究センターなどの資料をもとに、いまの流行状況、かぜとの見分けの手がかり、受診のサイン、診断と治療、家庭でのケア、登園・登校の目安を整理しました。診断と薬の判断は医療者が行うものです。迷ったら自己判断せず、かかりつけの小児科に相談してください。
2026年のいまの流行状況
溶連菌による咽頭炎は、感染症法で5類感染症の小児科定点把握対象疾患に位置づけられ、全国の小児科定点医療機関から毎週報告されています。執筆時点(2026年9月10日)で公表されている最新は2026年第34週(8月17日〜23日)です。
- 第34週:定点当たり報告数1.09(報告数2,420件)。前週から増加し、過去5年の同時期の平均を0.37上回る
- 第33週(8月10日〜16日):0.82。2週連続で減少していた
- 第17週(4月20日〜26日):3.23。3週連続で増加し、この時期がこの年の高い山だった
第34週の都道府県別上位は愛媛県(4.10)、鳥取県(2.74)、島根県(2.55)でした。夏休みでいったん下がった数字が、新学期に向けて上向いたかたちです。
住んでいる地域のいまを知りたいときは、東京都であれば東京都感染症情報センターが「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行状況」として定点当たり患者報告数の推移と保健所別の流行マップを随時(原則として毎週木曜日)更新しています。同じような発生動向の情報は各自治体の感染症情報センターでも公表されています。
メモ
これからの季節は注意が要ります。JIHSは「咽頭炎は学童に多く、冬季と、春から初夏の、2つの流行のピークがある」とし、こども家庭庁の保育所ガイドラインも「毎年、『冬』及び『春から初夏にかけて』という2つの時期に流行する」と記しています。秋が深まるにつれて、冬の山に向かう時期に入っていきます。
どんな病気か
病原体はA群β溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)です。JIHSは「主に飛沫感染・接触感染である。急性期が最も感染性が高く、集団生活での感染が問題となる」と説明しており、東京都保健医療局は食品を介した経口感染にも触れています。潜伏期間は2〜5日です。
症状は、突然の発熱、咽頭痛、全身倦怠感で発症し、しばしば嘔吐を伴います。通常、発熱は3〜5日以内に下がり、主症状は1週間以内に消失するとされ、予後は良好な病気です。舌が苺状に赤く腫れる「いちご舌」や、全身に鮮紅色の発しんが出て猩紅熱と呼ばれる形をとることがあり、発しんがおさまった後に指の皮がむけることもあります。
年齢では、急性咽頭炎の原因としてのA群溶連菌は5歳から12歳で頻度が高く、3歳未満では稀とされます。ただし園でまわりが流行していれば、3歳前後の子でも起こりえます。
かぜとの見分けの手がかり(早見表)
厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き第四版」は、A群溶連菌(GAS)咽頭炎とウイルス性咽頭炎の鑑別点を次のように整理しています。家庭で当てはめて安心・不安を決めるためのものではなく、「受診したほうがよさそう」と考える手がかりとして読んでください。
| 見分けの向き | 手がかりになりやすい特徴 |
|---|---|
| 溶連菌(GAS)咽頭炎に傾く | 突然発症、発熱、頭痛、嘔気・嘔吐、腹痛、圧痛を伴う前頸部リンパ節の腫れ、猩紅熱様の皮疹 |
| ウイルス性咽頭炎に傾く | 結膜炎、咳、声がれ、鼻汁、筋肉痛、下痢 |
注意
大事なのは、この表では確定できないということです。同手引きは、医師が使うCentorの基準ですら最高点(4点)での陽性率は68%にとどまり、スコアだけで原因を判断することは過剰診断と治療につながると明記しています。また日本の報告では、急性咽頭炎と診断された小児のうちGAS陽性は16.3%とされ、「のどが痛い=溶連菌」ではありません。確定には咽頭ぬぐい液を使った検査が必要です。
受診を考えるサイン
注意
- 突然の発熱とのどの痛みがあり、咳や鼻水はあまり出ていない
- のどの痛みで食事や水分がとれない、飲み込むのをいやがる
- 舌が赤くブツブツして見える、体に赤い発しんが出てきた
- 首の前側のリンパ節が腫れて、触ると痛がる
- のどの痛みや発熱があり、かつ園やきょうだいで溶連菌が出ている
- 熱が下がらない、ぐったりして反応が鈍い、顔色が悪い
唾も飲み込めずによだれが垂れる、口が開けにくい、ゼーゼー・ヒューヒューという息の音がする、前かがみで苦しそうな姿勢をとる、といった様子があるときは、のどの奥の別の病気(急性喉頭蓋炎や扁桃周囲膿瘍など)の可能性もあり、急いで受診してください。
夜間・休日で迷うときは、子ども医療電話相談(♯8000)や、日本小児科学会の「こどもの救急(ONLINE-QQ)」が使えます。
あわせて読みたい
乳児の発熱、受診の目安と自宅でのケア方法
診断と治療
- 1
診察で溶連菌らしさを見きわめる
医師は症状と所見から、溶連菌咽頭炎の可能性が高いかを判断します。手引きは、可能性が高いと判断した症例に限って検査を行うことが重要としています。 - 2
迅速抗原検査(必要なら培養検査)
咽頭ぬぐい液を使った迅速抗原検査は短時間で結果が出ます。感度は70〜90%、特異度は95%とされ、陽性であれば追加の培養検査は不要です。陰性でも臨床的に疑いが強い場合には培養検査が追加されます。検査の適応は原則3歳以上で、周囲で流行している場合はその限りではないとされています。 - 3
陽性なら抗菌薬を開始
第一選択はアモキシシリン(ペニシリン系)です。手引きは小児の投与例として30〜50mg/kg/日を分2または分3、10日間の経口投与(最大1,000mg/日)を挙げています。重いペニシリンアレルギーがある場合はクリンダマイシンなどが検討されます。 - 4
決められた期間、最後までのみきる
熱が下がり、のどの痛みが引いても、処方された日数をのみ切ります。
「飲みきる」ことに意味がある理由
手引きは、溶連菌咽頭炎に抗菌薬を使う目的を3つ挙げています。第一が菌を除くことによる急性リウマチ熱の予防で、発病から9日以内に抗菌薬を始めれば予防効果が証明されているとされます。第二が症状の緩和ですが、症状はもともと3〜4日で軽快するもので、抗菌薬が有症状期間を短くするのは半日から1日程度にとどまります。第三が周囲への感染の広がりを抑えることです。
つまり、「のみきる」ことの主眼は目の前の熱を早く下げることではなく、あとから起こりうる合併症を防ぐことにあります。手引きが引く2012年のコクランレビューは、ペニシリン系抗菌薬を10日間使う場合と、ペニシリン系以外の抗菌薬を4〜6日使う場合を比べたもので、短期治療群のほうが症状の消失は有意に早いものの再燃率は高く、副作用はペニシリン系のほうが少なかったと報告されています(リウマチ熱・腎炎の合併率には有意差がありませんでした)。国立成育医療研究センターも「リウマチ熱……を予防するために10日間しっかりとアモキシシリンを飲み切ることが大事です」と説明しています。
ヒント
薬をいやがって困るときは、自己判断で減らしたり中断したりせず、まず薬剤師や主治医に相談してください。剤形(粉・シロップ)を変えられることもありますし、飲ませ方の工夫で乗り切れることも多いです。
あわせて読みたい
子どもへの薬の飲ませ方|粉薬・シロップ・坐薬を嫌がるときの工夫と注意点
合併症について知っておきたいこと
こども家庭庁の保育所ガイドラインは「適切に治療すれば後遺症がなく治癒するが、治療が不十分な場合には、発症数週間後にリウマチ熱、腎炎等を合併することがある」と記しています。まれに、敗血症性ショックを示す劇症型もあるとされます。
急性糸球体腎炎について、日本腎臓学会は「扁桃炎などが治ってから10日前後経って発症する一過性の腎炎」で、A群β溶連菌が代表的な原因菌、小児〜若年者に多いと説明しています。症状は顔面・まぶた・足のむくみ、コーラ色になる肉眼的血尿、尿量の低下、高血圧など。時間の経過とともに血尿・蛋白尿・腎機能は自然に改善する予後良好な疾患だが、時に尿所見異常が持続し腎機能障害が残ることもある、とされています。
メモ
確率としてはまれな合併症です。過度に怖がる必要はありませんが、治ったあと数週間のうちに、まぶたのむくみ・尿の色の変化・尿の量が減るといった様子に気づいたら、溶連菌にかかったことを伝えたうえで受診してください。園や学校で尿検査を受ける機会があれば、それも一つの安全網になります。
家庭でのケア
のどが痛い数日をどう乗り切るかが、家庭でできることの中心になります。
のどが痛い日の過ごし方
- しみにくいものを選ぶ。プリン・ヨーグルト・冷ましたおかゆ・豆腐・アイスなど、やわらかく刺激の少ないもの
- 熱いもの・すっぱいもの・塩気や香辛料の強いもの・かたいものは避ける
- 食べられなくても水分は優先。麦茶や経口補水液を少量ずつこまめに
- 室内は乾燥させすぎない。加湿と、こまめな休息
- 解熱鎮痛剤は自己判断で足さず、処方や説明された範囲で使う。飲むことで水分がとれるようになることもある
解熱鎮痛剤について、手引きは、小児の感冒などで発熱・咽頭痛等に対して「適宜、アセトアミノフェン等の解熱鎮痛剤による対症療法を行う」としています。用量・間隔は年齢と体重で決まるため、必ず処方や薬剤師の説明に従ってください。市販薬を追加する前に、すでに処方された薬と重複しないか確認することも大切です。
こうした迷いはよく聞かれます。整理すると、登園の判断の軸は「抗菌薬をのみ始めてどのくらい経ったか」と「全身の状態が良いか」の2つで、薬をのむ期間はそれとは別に処方どおり最後まで、ということになります。
家庭内でうつるのを防ぐ
急性期がもっとも感染力が高いとされ、長時間いっしょに過ごす家庭は広がりやすい場所です。有効なワクチンはないため、基本の対策の積み重ねになります。
家庭内二次感染を減らす工夫
- 外から帰ったとき・食事前・咳やくしゃみのあとは、流水と石けんで手を洗う
- 咳が出ている人はマスクを着ける。子どもにはティッシュや肘で口と鼻を覆う咳エチケットを教える
- タオルの共用をやめ、手ふきはペーパータオルや個人別にする
- コップ・スプーンの共用、食べかけや回し飲みを控える(食品を介した経口感染も報告されている)
- 体調が悪い家族は、無理に出勤・登園しない
あわせて読みたい
子どもの手洗い・うがいの習慣づけ|正しい洗い方と年齢別の教え方
登園・登校はいつから
保育園については、こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインが、溶連菌感染症を「医師の診断を受け、保護者が登園届を記入することが考えられる感染症」の一つに挙げ、登園のめやすを「抗菌薬内服後24〜48時間が経過していること」としています。同ガイドラインは感染しやすい期間を「適切な抗菌薬治療を開始する前と開始後1日間」とも記しています。
一方、国立成育医療研究センターは「抗菌薬内服開始後24時間が経過し、全身状態が良ければ登園や登校が可能となります」と説明しており、資料によって24時間と24〜48時間で幅があります。園や学校の規定、そして主治医の指示を優先してください。
学校については、学校保健安全法施行規則が定める出席停止の対象に溶連菌感染症は名指しでは挙がっていません。第三種の感染症は「コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症」とされ、第三種にかかった者の出席停止の期間の基準は「病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで」です。つまり日数ではなく、状態と医師の判断で決まります。
ヒント
実務としては、次の順で進めるとスムーズです。
- 診断がついた時点で、園・学校に病名と検査結果、抗菌薬を開始した日時を伝える
- 登園届などの書式が必要か、園(または自治体)に確認する。書式や必要性は地域・施設で異なる
- 抗菌薬をのみ始めてから24〜48時間が経ち、熱が下がって全身状態が良ければ登園・登校を相談する
- 登園を再開しても、残りの日数の薬は最後までのみ切る
くり返しかかる・きょうだいへの対応
溶連菌は、一度かかったあとにもう一度かかることがあります。くり返す子は珍しくないので、「またなの」と落ち込む必要はありません。
きょうだいについては、症状のない子を念のため検査する、という発想には注意が必要です。手引きは、無症状の児の10〜30%にGASの保菌が認められるとし、適応外の児に検査を行うと保菌者を拾い上げ、過剰な抗菌薬使用につながると指摘しています。こども家庭庁も、不顕性感染例が15〜30%いると報告されているが、不顕性感染例から感染することは稀と考えられていると記しています。
メモ
きょうだいに関して家庭でできるのは、検査を先回りすることではなく、のどの痛みや発熱といった症状が出たときに早めに受診することです。判断は診察した医師に委ねましょう。
あわせて読みたい
子どものとびひ(伝染性膿痂疹)対策|夏に広がる細菌性の皮膚感染を防ぐケアと受診・登園の目安
よくある質問
熱が下がって元気になりました。薬はもうやめていいですか?
のどの痛みだけで検査してもらえますか?何歳から検査できますか?
きょうだいや親にもうつりますか?
登園許可証(治癒証明)は必要ですか?
何度もかかります。体が弱いということでしょうか?
まとめ
溶連菌感染症は、突然の発熱とのどの痛みで始まり、咳や鼻水が目立ちにくいのが手がかりになる病気です。ただし見た目だけでは確定できず、検査があってはじめて診断がつきます。治療は抗菌薬をのみ切ること。その意味は、目の前の熱を早く下げることより、あとから起こりうる合併症を防ぐところにあります。
溶連菌感染症で押さえておきたいこと
- 潜伏期間は2〜5日。突然の発熱・のどの痛み・嘔吐で始まり、咳や鼻水は目立たないことが多い
- 見た目では確定できない。咽頭ぬぐい液の迅速抗原検査や培養検査で診断する
- 検査の適応は原則3歳以上。3歳未満では溶連菌による咽頭炎は稀とされる
- 第一選択はアモキシシリンの10日間内服。急性リウマチ熱の予防が主目的なので途中でやめない
- 登園のめやすは『抗菌薬内服後24〜48時間が経過していること』(こども家庭庁)。学校は日数の基準がなく、第三種の「その他の感染症」として学校医等が感染のおそれがないと認めるまで(本文参照)
- 2026年は第34週で定点当たり1.09と増加に転じた。冬と春〜初夏に2つのピークがある
熱とのどの痛みで機嫌が悪い数日は、親のほうも消耗します。それでも、溶連菌咽頭炎の症状はもともと3〜4日で軽快していくとされ、多くの子は数日で楽になっていきます(抗菌薬が有症状期間を短くするのは半日から1日程度で、のみ切る意味は合併症の予防にあります)。あとは残りの日数をのみ切るだけ。判断に迷ったときは、遠慮なくかかりつけの小児科や♯8000を頼ってください。
あわせて読みたい
子どものインフルエンザ|家庭でのケアと登園・登校再開の目安(2026/27シーズンは流行入りが異例に早い)
出典・参考
- A群溶血性レンサ球菌感染症/国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
- IDWR 2023年第43号<注目すべき感染症>A群溶血性レンサ球菌咽頭炎/国立健康危機管理研究機構(JIHS)
- 感染症週報(IDWR) 2026年第34週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 感染症週報(IDWR) 2026年第33週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 感染症週報(IDWR) 2026年第17週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 抗微生物薬適正使用の手引き第四版(医科・外来編/令和8年・PDF)/厚生労働省
- 保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版・2023年5月一部改訂/令和5年10月10日現在・PDF)/こども家庭庁
- 学校保健安全法施行規則(第十八条・第十九条)/e-Gov法令検索
- 溶連菌(A群レンサ球菌)感染症/国立成育医療研究センター
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎(溶連菌感染症)について/東京都保健医療局
- A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の流行状況/東京都感染症情報センター
- 5.糸球体腎炎/一般社団法人 日本腎臓学会
- 子どもの症状は♯8000/厚生労働省
- こどもの救急(ONLINE-QQ)/日本小児科学会
関連する記事
子どものインフルエンザ|家庭でのケアと登園・登校再開の目安(2026/27シーズンは流行入りが異例に早い)
2026年は8月に流行入り。家庭でのケア、解熱剤、抗インフルエンザ薬、異常行動、受診サイン、「発症後5日・解熱後2日(幼児は3日)」という出席停止の数え方を公的資料をもとに整理しました。
乳児の発熱、受診の目安と自宅でのケア方法
乳児が発熱したとき、どのタイミングで受診すべきかを小児科学会・厚生労働省の情報をもとに整理します。自宅での過ごし方・水分補給・解熱剤の使い方もあわせて解説します。
子どもへの薬の飲ませ方|粉薬・シロップ・坐薬を嫌がるときの工夫と注意点
処方された薬を家でどう飲ませるか。粉薬の練り方、シロップの量り方、坐薬の入れ方と2種類使うときの間隔、混ぜてはいけないもの、吐いた・飲ませ忘れたときの考え方、保管と誤飲対策までを公的機関・小児専門病院の情報をもとに整理しました。


