子どもへの薬の飲ませ方|粉薬・シロップ・坐薬を嫌がるときの工夫と注意点
対象の目安: 0〜6歳ごろ

診察が終わって薬をもらって帰ってきた。ここからが本番、というご家庭は多いと思います。口を固く閉じる、飲んだと思ったら吐き出す、坐薬を入れたとたんに出てしまう。体調が悪くて機嫌も悪い子を相手に、親のほうが泣きたくなる場面です。この記事では、受診の目安ではなく「処方された薬を家でどう飲ませるか」に絞って、粉薬・シロップ・坐薬・目薬の扱い方、混ぜてよいもの・避けたいもの、吐いたときや飲ませ忘れたときの考え方、保管と誤飲対策までを整理しました。ただし、薬は一つひとつ性質が違います。ここに書いたことはあくまで一般的な考え方で、最終的にはその薬を出した医師・薬剤師の指示が優先します。
熱が出たときに受診すべきかどうかの目安は別の記事で扱っています。この記事は「受診して薬が手元にある」段階からの話です。
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剤形別の早見表
家庭でよく処方される剤形と、扱い方の要点をまとめました。
| 剤形 | 基本の使い方 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 粉薬(散剤・ドライシロップ) | 少量の水で練ってペースト状にし、頬の内側や上あごに塗ってから水などを飲ませる | 舌の上に置くと苦みを感じやすい。口に残ると後から苦みが出る |
| シロップ・水薬 | 容器を軽く振って混ぜ、カップ・スポイト・シリンジで1回量を正確に量る | 瓶から直接飲ませると量が不正確になり、衛生面でも避けたい |
| 坐薬 | おむつ替えの姿勢でとがったほうから挿入し、しばらく押さえる | 冷たいまま入れると刺激で出てしまうことがある。2種類使うときは順番と間隔がある |
| 目薬 | 仰向けで体を固定し、容器の先がまつ毛に触れないよう1滴落とす | 2種類以上使うなら5分以上あける。家族間で共有しない |
| 錠剤 | 水またはぬるま湯で飲む | 飲めるようになるのは一般的に5歳くらいから。割ってよい薬とそうでない薬がある |
年齢が上がるほど選択肢は広がりますが、「この年齢だからこの剤形」と決まっているわけではありません。同じ薬でも粉薬と坐薬の両方があることもあります。飲むのがどうしても難しいときは、剤形を変えられないか処方元に相談してみてください。
| 年齢の目安 | 使いやすい剤形 | 工夫のポイント |
|---|---|---|
| 0〜1歳ごろ | シロップ、粉薬(練る/溶かす)、坐薬 | スポイトやシリンジで頬の内側へ。空の乳首を使う方法もある |
| 1〜3歳ごろ | 粉薬、シロップ、坐薬 | 服薬補助ゼリーやアイス、オブラートなどの助けを借りる |
| 3〜6歳ごろ | 粉薬、シロップ、錠剤(飲めれば) | 「なぜ飲むのか」を短い言葉で説明する。飲めたことを一緒に喜ぶ |
粉薬を飲ませる
粉薬でいちばん確実なのは、練ってから口の中に塗る方法です。
- 1
手を洗い、1回分をスプーンにのせる
分包されている薬は1包が1回分です。複数の袋を勝手にまとめたり分けたりせず、指示どおりの量を使います。 - 2
数滴の水を加えて練る
スプーンの上で、数滴の水を加えてペースト状(泥状)になるまで練ります。水を入れすぎるとまとまらないので、少しずつ足してください。 - 3
頬の内側や上あごに塗りつける
きれいに洗った指先で、頬の内側や上あごに塗ります。舌の上は苦みを感じやすいので避けます。 - 4
すぐに水やぬるま湯を飲ませる
口の中に薬が残っていると、あとから苦みが出てきます。塗ったらすぐに水や湯冷ましなどを飲ませて流し込みます。
液状にして飲ませたい場合は、1回分をカップに入れて少量の水や単シロップで溶かし、カップ・スポイト・スプーンで飲ませます。スポイトやシリンジを使うときは、のどの奥に入れると咳き込みやすいので、頬の内側に沿って流し込むのがコツです。
ヒント
どうしても粉薬が苦手なら、家庭でできる助けもあります。服薬補助ゼリー(ゼリーの上に薬をのせ、さらにゼリーで包む)、オブラート、空のカプセル、少量の水で溶かして凍らせシャーベット状にする方法などです。いずれも「その薬に使ってよいか」を先に薬剤師へ確認しておくと安心です。
シロップ・水薬を飲ませる
シロップは甘く味が調えられているぶん飲みやすい一方、量の管理が大切な剤形です。
- 使う前に容器を軽く振って中身を均一にします。激しく振ると泡立って正確に量れません。
- 1回分をカップ・スポイト・シリンジで正確に量りとります。瓶から直接飲ませるのは、量が不正確になり衛生面でも問題があるため避けてください。
- スプーンや、中身を入れていない空の乳首を使う方法もあります。空の乳首なら、先に乳首だけをくわえさせ、吸い始めてからシロップを入れるとこぼれにくくなります。
- 飲んだあとは水などを飲ませます。
- 使ったカップやスポイトは毎回洗って乾かし、清潔に保ちます。
- 室温保存の指示がないシロップは冷蔵庫で保管します。
メモ
シロップを嫌がるときは、飲ませる直前に1回分だけを水で薄める方法もあります。ただし薄めすぎると量が増えて飲みきれなくなるので、少量にとどめてください。薄めたぶんを残してしまうと、必要な量が入りません。
何に混ぜてよくて、何に混ぜてはいけないか
「甘いものに混ぜれば飲む」というのは半分正解で、半分は注意が必要です。
混ぜる先としてよく挙げられるのは、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー、練乳、少量の砂糖水など、ふだん毎日は口にしないものです。一方で、次のものは避けたほうがよいとされています。
注意
- ミルクやごはんなど、毎日食べるものに混ぜるのは避けてください。味が変わってミルク嫌い・ごはん嫌いにつながることがあります。ミルクを飲み残せば薬も飲み残すことになります。
- ジュースで溶かすと、かえって苦味が出る薬があります。酸味の強い飲み物との組み合わせは特に注意が必要です。
- 混ぜると効果が弱まってしまう組み合わせ、苦みが強くなる組み合わせがあります。何に混ぜてよいかは、その薬ごとに薬剤師へ確認してください。
- 1歳未満の子にはちみつは与えないでください。乳児ボツリヌス症の危険があるため、薬を飲ませる目的でも使えません。
なお、乳児の場合は食後でおなかがいっぱいだと薬を嫌がって吐き出してしまうことがあり、食前に飲ませることをすすめられる場合があります。食事の影響を受ける薬もあるため、タイミングを変えたいときは自己判断せず処方元に相談してください。
坐薬の使い方
坐薬は、飲むのが難しい子や吐いてしまう子にとって頼りになる剤形です。手順を知っておくと落ち着いて使えます。
- 1
手を洗う
清潔な手で扱います。使い捨て手袋を使ってもかまいません。 - 2
指示があれば包装のまま切る
「1回2分の1個」などの指示があるときは、包装のまま清潔なカッターやはさみで斜めに切ります。使うのは先のとがったほうです。残った半分の扱いは指示が分かれており、とっておかず捨てるよう案内している施設もあれば、きれいなラップなどで包んで冷蔵庫に保存するよう案内している施設もあります。薬袋の記載や薬剤師の指示に従ってください。 - 3
包装からとがったほうを出す
先のとがったほうから包装をはがして薬を出します。とがった先に水やベビーオイル、ワセリンを塗ると滑りがよくなり、入れやすくなります。 - 4
姿勢を整えて挿入する
おむつを替える姿勢(仰向けで両足を持ち上げる)、ハイハイの姿勢、横向きで膝を曲げる姿勢のいずれかでおしりを出し、とがったほうから挿入します。 - 5
しっかり押し込んで少し押さえる
奥まで押し込むと戻りにくくなります。挿入後にティッシュでしばらく押さえておくのもよい方法です。最後にもう一度手を洗います。
冷蔵庫で保管している坐薬を出してすぐ使うと、冷たさの刺激で便と一緒に出てしまうことがあります。使う前に手で少し温めておくとスムーズです。
入れた直後に便と一緒に出てしまった場合は、もう一度入れます。しばらく経っていて便の中に坐薬が見当たらないときは、すでに吸収されていると考えられるため、追加せず様子を見ます。判断に迷うときは処方元に確認してください。
注意
2種類以上の坐薬を使うときは、順番と間隔があります。一般に、水溶性基剤の坐薬(抗けいれん薬や吐き気止めなど)を先に使い、少なくとも30分以上あけてから油脂性基剤の坐薬(解熱薬など)を使います。同時に入れると有効成分が油脂性基剤に取り込まれて吸収が悪くなり、期待した効果が得られないことがあるためです。ただし薬の組み合わせによって指示は変わります。順番と間隔は必ず処方元の指示に従ってください。
熱性けいれんで坐薬が処方されている場合の考え方は、別の記事でも触れています。
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目薬・その他の外用薬
目薬は、仰向けに寝かせて大人の両足で子どもの両肩から腕を固定すると安定します。首を振ってしまうときは、大人のふとももで頭をはさむようにするとしっかり固定できます。乳児ならタオルで体をくるむ方法もあります。容器の先がまつ毛などに触れないよう気をつけて1滴落とします。
怖がって目を開けていられない場合は、眠っているあいだに点眼する、仰向けで目をつむった状態のまま目頭のくぼみに1滴落とす、といった方法があります。点眼後はまばたきをせず、しばらく目を閉じているのが理想です。
- 2種類以上の点眼薬を使うときは、それぞれ5分以上あけます。
- 使用期限は、細菌汚染による二次感染を考えて開封後1か月が一般的な目安です。それより前でも、濁りやゴミが見えたら使うのをやめてください。
- 家族であっても目薬を共有してはいけません。
吐いた・飲ませ忘れた・量を間違えたとき
いちばん不安になる場面です。原則を知ったうえで、迷ったら聞く、が基本になります。
| 状況 | 一般的な考え方 |
|---|---|
| 飲ませた直後に吐いた | もう1回分を飲ませるのが一般的 |
| 飲ませて30分以上経ってから吐いた | すでに吸収されている可能性があるため、追加せず様子を見る |
| 飲ませ忘れに気づいた | 気づいた時点で飲ませ、次回を少し遅らせる。次回が近ければ1回分を飛ばす |
| 2回分をまとめて飲ませたくなった | してはいけない。まとめ飲みは絶対に避ける |
| 量を間違えた・多く入れてしまった | 自己判断で調整せず、すぐに処方元か薬局へ連絡する |
ヒント
夜間や休日で処方元がつながらないときは、子ども医療電話相談(#8000)が使えます。全国統一の短縮番号#8000をプッシュすると、お住まいの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師から症状に応じた対処の仕方や受診する病院などのアドバイスを受けられます。実施時間帯は都道府県によって異なるため、あらかじめお住まいの地域の対応時間を調べて、電話のそばに書いておくと安心です。あわせて、症状から受診の目安を確認できる日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」も知っておくと、迷ったときの助けになります。
抗菌薬のように「症状が消えても決められた期間は飲みきる」タイプの薬もあります。熱が下がったからと自己判断でやめると、また悪くなったり耐性菌ができたりすることがあります。処方を受けるときに「これはどういう薬で、いつまで飲むのか」を確認しておくと、家での判断がぐっと楽になります。
保管と、誤飲を防ぐ工夫
薬は、飲ませ方と同じくらい「置き方」が大事です。子どもは成長とともに、見つけたものを口に入れ、引き出しや冷蔵庫を開け、台を持ってきて高いところのものを取れるようになります。
- 薬を飲む前後に無防備に置かない。水を取りに行ったすきに誤飲した事例があります。飲ませたら毎回すぐ片づけます。
- 高さ1m以下(冷蔵庫の中を含む)に保管しない。1歳で身長は約80cmあり、1mまで手が届きます。就学前でも冷蔵庫からシロップを取り出して飲むことができます。
- 子どもが開けられない容器(しっかりしたふたのケース、フリーザーバッグなど)にしまう。幼児でも錠剤のPTP包装は開けられます。
- 不必要に子どもの前で薬を飲むところを見せない。家族のまねをして誤飲した事例があります。
- 医薬品は、こどもの目に触れない場所・手の届かない場所に保管します。
保管条件は剤形によって違います。粉薬は光を通さない密封できる缶や袋へ(漢方薬は特に湿気に弱いので乾燥剤と一緒に)、シロップ・水薬は室温保存の指示がなければ冷蔵庫へ、坐薬は冷蔵庫保管のものとそうでないものがあるので薬袋を確認して涼しいところへ。迷ったら薬袋や説明書を見るのがいちばん確実です。
注意
きょうだいの薬や、以前もらって残っていた薬を使い回さないでください。処方された薬は、そのときの症状とその子の成長(体重など)に合わせた内容です。症状が同じように見えても、別の病気のこともあります。特別な場合を除き、投与期間が過ぎて余った薬は捨ててください。
誤飲してしまったときは
薬の誤飲が疑われるときは、まず何をどれくらい飲んだのかを確認します。病院で処方された薬なら薬袋や残りの薬を、市販薬ならその箱や残りを手元に用意してください。
家庭で吐かせることは勧められていません。吐いたものが気管に入って危険なためです。口の中に残っているものがあれば取り除き、口をすすがせます。意識がない、けいれんを起こしているなど重い症状があるときは、迷わず救急車を呼んでください。
受診が必要かどうか、応急手当がわからないときは、公益財団法人日本中毒情報センターの中毒110番に相談できます。一般の方からの相談は情報提供料無料で、365日24時間対応です。
- 大阪中毒110番:072-727-2499
- つくば中毒110番:029-852-9999
薬に限らず、家庭にある小さなものの誤飲・誤嚥をどう防ぐかは別の記事にまとめています。
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乳幼児の窒息・誤嚥(ごえん)を防ぐ|危険な食べ物と、詰まらせたときの応急手当
飲ませられない日があってもいい
飲めない状態が続くなら、剤形を変えられないか、味の違う同じ効果の薬はないか、量を分けて飲ませてよいかなど、相談できることはたくさんあります。「飲ませられませんでした」と正直に伝えるのは、決して悪いことではありません。むしろ、飲めていない前提で次の手を考えてもらえるほうが、子どもにとって安全です。
幼児期になったら、なぜ飲むのかを短い言葉で伝えるのも助けになります。「これを飲むと、のどのいたいのが早くおしまいになるよ」くらいで十分です。飲めたときは大げさなくらい一緒に喜んでください。次の1回がずいぶん楽になります。
よくある質問
粉薬をミルクに混ぜてもいいですか?
服薬ゼリーは使ってもいいですか?
薬を飲ませた直後に吐いてしまいました。飲み直しますか?
飲ませ忘れたときはどうすればいいですか?
坐薬を2種類もらいました。どちらを先に入れますか?
きょうだいの薬や、前に残った薬を使ってもいいですか?
熱が下がったので薬をやめてもいいですか?
薬を誤飲したかもしれないときはどうすればいいですか?
錠剤はいつごろから飲めますか?
まとめ
薬を飲ませるコツは、意外と地味なところにあります。舌の上を避けて頬の内側へ塗る、量を正確に量る、坐薬は温めてから入れる、混ぜてよいかを先に聞いておく。ひとつずつは小さなことですが、毎回の負担がずいぶん変わります。
薬をもらったその日に確認したいこと
- どういう薬で、いつまで飲むのか(症状が消えてもやめない薬か)を処方元に確認した
- 何に混ぜてよいか、服薬ゼリーやアイスを使ってよいかを薬剤師に聞いた
- 坐薬が2種類あるなら、順番と間隔の指示を確認した
- 保管場所を決めた(高さ1m以下・冷蔵庫内も含めて子どもが届く場所は避ける)
- 吐いたとき・忘れたときの連絡先と、#8000の対応時間をメモした
そして、どうしても飲ませられない日があっても、自分を責めないでください。うまくいかなかったことをそのまま伝えれば、次の手を一緒に考えてもらえます。判断に迷う症状があるときは、かかりつけ医・薬剤師・自治体の窓口、夜間や休日なら子ども医療電話相談(#8000)へ。ひとりで抱え込まないことが、いちばん確かな安全策です。
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出典・参考
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