夜驚症(睡眠時驚愕症)とは|夜中に突然叫ぶ子への対応と受診の目安
対象の目安: 3〜6歳ごろ

寝かしつけて1時間ほどたったころ、突然「わーっ」と叫んで泣き出す。目は開いているのに呼びかけても通じず、抱きしめようとすると余計に暴れる。それなのに数分でことんと眠り、翌朝はけろりとしていて本人は何も覚えていない——。はじめて見たときは「何か悪い病気では」「昼間の叱り方がいけなかったのでは」と心配になる方も少なくありません。これは夜驚症(やきょうしょう/睡眠時驚愕症)と呼ばれる現象で、幼児期の子どもによく見られ、多くは成長とともに自然に減っていきます。この記事では、夜驚症の仕組みと夜泣き・悪夢との違い、起きたときの対応、生活の工夫、受診を考える目安を整理しました。
夜驚症とはどんな現象か
夜驚症は、睡眠中に起こる望ましくない現象をまとめた「睡眠時随伴症」のひとつです。国立精神・神経医療研究センターは、睡眠中に突然叫び声を上げたり泣き出したりする夜驚症を代表的な睡眠時随伴症として挙げ、多くは小児期に始まって思春期早期には自然に治ると説明しています。本人は実際に何が起こったかを思い出せず、夢を見ていた体験も伴わないとされています。
起こっている間、子どもは眠りから完全には目覚めていません。深いノンレム睡眠から中途半端に覚醒した、いわば「深いねぼけ」の状態です。日本小児心身医学会は、夜間睡眠の前半の時間帯(22時から1時ごろにかけて)に、恐怖に満ちた大きな叫び声とともに目が覚め、頬が紅くなる・瞳孔が開く・脈が速くなる・激しく汗をかくといった変化を伴い、呼びかけても反応せず本人も覚えていない、と説明しています。
多くは小児期に始まり思春期早期に自然に治ること、本人が出来事を思い出せず夢見の体験を伴わないことは、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所睡眠・覚醒障害研究部「睡眠時随伴症」を参考にしています。
年齢の目安としては、東邦大学医療センター佐倉病院小児科の解説で、夜驚症は3歳から6歳くらいの子どもに多く見られ、発達に伴って自然によくなっていくもので多くの場合は特別な治療が不要と説明されています。1回の長さも普通は2〜3分、長くても10分以内、毎晩あっても一晩に1回だけということが多く、最初は回数が多くても2〜3か月で減ってくる経過をたどる子が多いとされます。
メモ
夜驚症は、親の育て方や愛情不足で起こるものではありません。東邦大学医療センター佐倉病院小児科の解説でも、夜驚は育て方というより生まれつきの脳の素質によって起こるもので、育て方が悪かったからではないとはっきり述べられています。「昼間叱ったせいかも」と自分を責める必要はありません。
夜泣き・悪夢(ナイトメア)との違い
夜中に泣くという点は同じでも、夜驚症・夜泣き・悪夢は起こる時間帯も、本人の記憶も、なだめられるかどうかも違います。見分けの手がかりとして整理しておくと、その場で落ち着いて動けます。
| 夜驚症(睡眠時驚愕症) | 夜泣き | 悪夢(ナイトメア) | |
|---|---|---|---|
| 多い年齢 | 3〜6歳ごろが中心 | 乳児期〜1歳台が中心 | 幼児期以降 |
| 起こる時間帯 | 眠りの前半(おおむね22時から1時ごろ) | 夜間を通じて起こりうる | 明け方に近い睡眠の後半が多い |
| 本人の様子 | 叫ぶ・怖がる・汗をかく。目は開いていても覚醒していない | 泣いて目を覚ます。抱っこを求めることも | はっきり目を覚まし、怖がって親を求める |
| 呼びかけへの反応 | 反応が乏しく、なだめても届きにくい | あやすと落ち着くことが多い | 抱っこや声かけで落ち着ける |
| 翌朝の記憶 | 覚えていないのが一般的 | 状況によるが本人は語らない | 夢の内容を覚えていて話せることが多い |
MSDマニュアル家庭版でも、悪夢は完全に目が覚めて夢の細部まではっきり思い出すのに対し、夜驚症では小児自身が発作の詳細を思い出せない、と対比されています。
起こりやすい時間帯(22時から1時ごろ)や、呼びかけても反応せず本人も覚えていないことは、日本小児心身医学会「睡眠時随伴症」を参考にしています。
乳児期の夜泣きとの見分けや、月齢ごとの夜泣きの対処については、こちらもあわせてどうぞ。
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発作が起きたときの対応
夜驚症を途中で止める良い方法はない、と説明されています。だからこそ大人の役割は、「止めること」ではなく「安全に過ごさせること」に絞られます。
- 1
無理に起こさない
深いねぼけの状態なので、大声で呼んだり体を揺すったりすると、かえって混乱が強まることがあります。MSDマニュアル家庭版でも、眼を覚まさせるとより強い恐怖が生じるため起こしてはいけないと説明されています。 - 2
けがをしない環境を整える
泣きながら走り回ることもあります。押さえつけようとすると余計にひどくなるため、無理に止めず、ぶつかりそうな家具や壊れやすいものを寄せる、階段や玄関の戸締まりを確かめるといった安全確保を優先します。 - 3
声かけは最小限に
「大丈夫だよ」「ここにいるよ」と、低い声で短く。返事を求めたり質問を重ねたりする必要はありません。反応がなくても、責任を感じなくて大丈夫です。 - 4
おさまるまで見守る
多くは2〜3分、長くても10分以内でおさまり、そのまますとんと眠りに戻ります。おさまったら布団に戻し、大人もひと息つきましょう。 - 5
翌朝は問い詰めない
本人は覚えていないのが普通です。「何が怖かったの」と繰り返し聞かれると、かえって不安になってしまうことがあります。朝はいつもどおりに過ごすのがいちばんです。
起こりにくくする生活の工夫
夜驚症を完全に防ぐ方法はありませんが、睡眠が乱れにくい状態を整えておくことは、家庭でできる現実的な備えです。
- 睡眠時間を確保する: e-ヘルスネット「こどもの睡眠」では、米国睡眠医学会の推奨として1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間が紹介されています
- 就寝・起床の時刻をそろえる: 休日に大きくずれると、リズムが崩れて眠りが浅くなりやすくなります
- 疲れすぎた日は早めに寝る: 遠出や行事で体力を使い切った日は、いつもより30分早い就寝を意識します
- 寝る前の刺激を減らす: 画面を見る時間、はげしい遊び、怖い映像は就寝前を避け、静かなルーティンで眠りに入ります
- 眠りを妨げるものを整える: 鼻づまり、かゆみ、体調不良、暑すぎる・寒すぎる寝室など、夜中に眠りが浅くなる要因は取り除いておきます
ヒント
きっかけが思い当たることもあります。東邦大学医療センター佐倉病院小児科の解説では、夜驚がみられる3人に1人はきっかけがあり、家族旅行や遊園地といった楽しい体験、怖い体験、発表会などの緊張も引き金になりうるとされています。ただし、外出やお楽しみを控える必要はありません。もともと自然に治っていくものなので、あまり気にせず出かけてよいと説明されています。
年齢別の推奨睡眠時間(1〜2歳児は11〜14時間、3〜5歳児は10〜13時間、小学生は9〜12時間)は、e-ヘルスネット(厚生労働省)「こどもの睡眠」で紹介されている米国睡眠医学会の推奨によります。
睡眠時間の目安や寝室づくりをもう少し詳しく知りたいときは、こちらも参考になります。
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受診を考える目安
多くは経過を見るだけで落ち着いていきますが、次のような場合はかかりつけの小児科に相談してみましょう。「様子を見ましょう」と言われるだけでも、確かめてもらえた安心は大きいものです。
- 一晩に2〜3回起こる、1回が10分以上続くなど、回数や長さで家族が睡眠不足になっている
- 走り回る・階段や窓に向かうなど、けがの危険がある
- 大きないびきをかく、寝ている間に呼吸が止まるように見える、日中ぼんやりしている・落ち着かないといった様子が重なる
- 手足のつっぱりやガクガクした動きなど、毎回まったく同じパターンの動きが短く繰り返される
- 8歳を過ぎてから初めて始まった、いったんおさまったものが強く再発した
- 本人や家族の負担が大きく、日中の生活に影響が出ている
いびきや睡眠中の呼吸が気になるときは、耳鼻咽喉科への相談が入り口になることもあります。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、アデノイド肥大・扁桃肥大・鼻づまりなどを背景に大きないびきや呼吸の止まりが起こることがあり、夜中に目を覚ますことが多く日中もぼーっとしているといった様子が見られると説明しています。
注意
けいれんのような動きが目立つ、意識の戻り方がいつもと違う、日中にも似た症状が出るといった場合は、ほかの原因との区別が必要になることがあります。まれに別の疾患から似た症状が起こることもあるため、診察のうえで検査を行う場合があると説明されています。自己判断で薬を使ったりせず、気になるときはかかりつけ医に相談してください。
ヒント
相談のときは、いつごろから・週に何回くらい・入眠から何分後に何分続くか・そのときの様子(叫ぶ、走る、汗をかく等)・翌朝の記憶の有無・いびきの有無をメモしておくとスムーズです。数日分の記録があるだけでも、医師は状況をつかみやすくなります。
よくある質問
夜驚症のとき、起こしたほうがいいですか?
夜泣きや悪夢とはどう見分けますか?
何歳ごろまで続きますか?
昼間に叱ったせいでしょうか。育て方の問題ですか?
旅行やお出かけは控えたほうがいいですか?
きょうだいが起きてしまい、家族が寝不足です。どうすれば?
薬で治す必要はありますか?
まとめ
夜中に突然叫ぶ姿は、見ている大人のほうが消耗してしまうものです。けれど夜驚症は、深いノンレム睡眠から部分的に目覚めた「ねぼけ」の一種で、心の病気でも育て方の問題でもありません。多くは3〜6歳ごろに見られ、発達とともに自然に落ち着いていきます。
夜驚症への向き合い方チェックリスト
- 無理に起こさず、押さえつけずに見守れている
- 走り回っても危なくないよう、寝室まわりを片付けている
- 声かけは短く、返事を求めていない
- 翌朝に問い詰めず、いつもどおり過ごしている
- 年齢に見合う睡眠時間と、そろった就寝・起床時刻を意識している
- 寝る前の画面・はげしい遊び・怖い映像を控えている
- 回数が多い・けがの心配・大きないびきがあれば、かかりつけ医に相談する
「今夜も来るかもしれない」と身構える日々は、それだけで疲れるものです。多くの子は時間とともに落ち着いていきます。ひとりで抱え込まず、気になることはかかりつけ医に相談しながら、その子のペースを見守っていきましょう。
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