子どもの熱性けいれん|起きたときの対応と救急・受診の目安
対象の目安: 生後6か月〜5歳ごろ

「熱が上がってきたと思ったら、急に体を突っ張らせてガクガクふるえ出した」——熱性けいれん(熱性発作)は、目の前で起きると頭が真っ白になってしまうものです。けれど、乳幼児にはめずらしくないもので、その多くは数分でおさまり、経過も良いとされています。大切なのは、起きたときにあわてず、正しく対応し、救急車を呼ぶべきラインを知っておくことです。この記事では、日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」や日本医師会・日本小児科学会の一般向け情報をもとに、仕組み・起きたときの対応・救急と受診の目安・再発の見通しを整理しました。症状の出方には個人差があり、判断に迷うときは自己判断せず、かかりつけ医や相談窓口を頼ってください。
熱性けいれん(熱性発作)とは
熱性けいれんは、主に生後6か月〜5歳ごろの子どもが、38℃以上の発熱に伴って起こすけいれん(発作)のことです。近年は「熱性発作」とも呼ばれます。発熱の原因となる感染症そのものではなく、熱が上がる過程で、まだ発達の途中にある乳幼児の脳が一時的に反応して起こると考えられています。
多くは、体を突っ張らせたり、手足をガクガクと左右対称にふるわせたり、白目になって呼びかけに反応しなくなったりします。数分以内におさまり、その後は眠ったりぼんやりしたりしながら、次第にいつもの様子に戻っていくことが多いとされています。
メモ
「けいれん」と聞くと最悪の事態を思い浮かべてしまいますが、熱性けいれんは日本の子どもの数%程度(資料により約5〜8%)にみられる、ごくありふれたものとされています。命にかかわることはまずないとされ、多くの場合、脳や発達への影響は残らないと考えられています。まずは「多くはこわがりすぎなくてよいもの」と知っておくことが、いざというときの落ち着きにつながります。
単純型と複雑型のちがい
熱性けいれんは、経過によって「単純型」と「複雑型」に分けられます。厳密な区別や診断は医療機関で行うものですが、おおまかな考え方を知っておくと、受診時に様子を伝える助けになります。
| タイプ | おおまかな特徴 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 単純型 | けいれんは短く(おおむね15分未満)、体の左右が対称、24時間以内に繰り返さない | 熱性けいれんの多くはこちら。経過は良いとされる |
| 複雑型 | 15分以上続く、手足の左右差など部分的な症状がある、24時間以内に繰り返す | くわしい評価が必要なことがあり、医師が検査などを検討する |
単純型・複雑型の区別の考え方は、日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」(Mindsガイドラインライブラリ収載)を参考にしています。実際の分類・診断は医療機関で行われます。
「複雑型かもしれない」と気づいても、家庭でできることは変わりません。まずは落ち着いて対応し、けいれんの長さや左右差、繰り返しの有無を覚えておいて、受診時に医師へ伝えることが役立ちます。
起きたときの対応(あわてない)
熱性けいれんが始まったら、まずは深呼吸をひとつ。ゆすったり大声で呼び続けたりしても、けいれんはすぐには止まりません。次の手順で、安全を確保しながら様子を見守ります。
- 1
平らで安全な場所に寝かせる
床やベッドなど平らな場所に寝かせます。周りに硬い物・とがった物・熱い物があれば遠ざけ、ぶつけてけがをしないようにします。ソファや高い場所からの転落にも注意します。 - 2
顔と体を横向きにする
吐いてしまうことがあるため、吐いた物がのどに詰まらないよう、体をそっと左右どちらかに向けて横向きにします。首や胸元のボタン・スタイなどをゆるめ、呼吸を楽にしてあげます。 - 3
始まった時刻と様子を見る
何より役立つのが「いつ始まったか」と「どんな様子か」です。時計やスマホで始まりの時刻を確認します。全身か一部か、左右対称か、目や顔の向きはどうか、を落ち着いて観察します。可能なら短くスマホで動画に撮っておくと、受診時に医師へ伝えやすくなります。 - 4
おさまったら休ませ、様子を続けて見る
多くは数分でおさまります。おさまった後は眠ったりぼんやりしたりすることがありますが、呼びかけへの反応が戻ってくるか、呼吸や顔色は落ち着いているかを見守ります。落ち着いたら受診の要否を判断します。
注意
けいれん中は無理に体を押さえつけない、口の中に指や割り箸・タオルなどを入れない、水や薬を飲ませない、が原則です。「舌をかまないように口に物を入れる」は誤った処置で、かえって窒息やけが、歯の損傷につながる危険があります。日本医師会や日本小児科学会でも「口に物を入れない」と案内されています。
横向きにして衣服をゆるめること、割り箸などを口に入れないこと、けいれんの持続時間を確認することは、日本医師会「白クマ先生の子ども診療所」の案内に沿っています。
やってはいけないこと
けいれん中に避けたいこと
- 口の中に指・割り箸・スプーン・タオルなどを入れる(窒息・けがのもと)
- 体を強く押さえつけて、けいれんを止めようとする
- 水・お茶・薬を口から飲ませる(誤嚥のおそれ)
- 大声で名前を呼び続けたり、強くゆすったりする
- あわてて抱き上げて走り出す(転落・受傷のリスク)
救急車(119)を呼ぶ目安
多くの熱性けいれんは数分でおさまりますが、次のようなときは、ためらわず救急車(119)を呼びます。判断のいちばんの目安が「5分ルール」です。
注意
以下のいずれかに当てはまるときは、救急要請(119)や救急受診を検討してください。
- けいれんが5分以上続いている(止まる気配がない)
- 短いけいれんでも、いったんおさまった後に繰り返す(24時間以内に複数回)
- けいれんが止まっても意識がはっきり戻らない、呼びかけに反応しない
- 手足の動きに左右差がある、体の一部だけがけいれんしている
- 呼吸が苦しそう、唇や顔色が青紫色、ぐったりしている
- 初めてのけいれんである
- 生後6か月未満、または5〜6歳を過ぎている
- 頭を強く打った後や、けがを伴っている
「5分」は、けいれんが長引いて重積状態(長く続く状態)へ移行するのを防ぐための目安です。時間を計るのが難しければ、「けいれんの様子を見て、止まらないと感じたら」呼んで構いません。呼ぶかどうか迷う時点で、電話で相談してよい状況です。
5分以上続く場合にためらわず救急要請するという初期対応の考え方は、日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」に基づいています。
受診の目安と相談窓口
救急車を呼ぶほどではなくても、次のようなときは受診しておくと安心です。
- 初めて熱性けいれんを起こした(5分以内におさまり意識が戻っていても、いちど受診して確認する)
- 短時間でおさまったが、機嫌が戻らない・ぐったりが続く・水分が取れない
- けいれんの後に手足の動かしにくさなど、いつもと違う様子が残る
- 発熱の原因がはっきりせず心配、けいれんを繰り返している
初めてのけいれんは、たとえ短時間でおさまっても、原因の確認のために受診がすすめられています。夜間・休日で判断に迷うときは、次の窓口を活用してください。
- 子ども医療電話相談(#8000):小児科医・看護師に電話で相談できる窓口。夜間・休日も対応(時間帯は都道府県により異なります)。
- 救急安心センター(#7119):救急車を呼ぶか迷うときに相談できる(実施地域あり)。
- 日本小児科学会「こどもの救急(ONLINE-QQ)」:気になる症状から、家庭での対応や受診の目安を確認できるウェブサービス。
- 緊急時は迷わず119番:けいれんが続く・意識が戻らない・呼吸が苦しそうなとき。
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解熱薬とけいれんの関係
「解熱薬を早めに使えば、けいれんを防げるのでは」と考える方は少なくありません。しかし、解熱薬を使ってもけいれんの再発を確実に防げるわけではないとされています。一方で、解熱薬が熱性けいれんを誘発するわけでもないため、熱でつらそうなときに医師の指示に沿って使うこと自体は問題ないと考えられています。
つまり、解熱薬は「けいれん予防のため」ではなく、「熱によるつらさをやわらげるため」に、必要に応じて使うものと捉えておくと分かりやすいでしょう。使い方や種類・量は自己判断せず、かかりつけ医や薬剤師に確認してください。
なお、熱性けいれんを短い間隔で繰り返すお子さんには、発熱時にけいれんを予防する坐薬(ジアゼパム)が処方されることがあります。使うかどうかは一人ひとりの状況によって判断されるものなので、必要性は医師と相談してください。
再発の見通しと日常の心構え
熱性けいれんは一度起こすと、その後の発熱時にまた起こすことがあります。初めてが早い月齢だったり、家族に熱性けいれんの経験者がいたりすると、再発しやすい傾向があるとされます。ただし、成長とともに起こりにくくなり、多くは学童期までに自然と卒業していくと考えられています。
日常でできるのは、特別な予防よりも「起きたときにあわてない準備」です。対応の手順と救急の目安を家族で共有し、かかりつけ医の連絡先や#8000をメモしておくだけでも、いざというときの安心につながります。熱が出たら過度に神経質にならず、水分補給と休養を大切にしながら、いつもの様子との違いを見守っていきましょう。
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よくある質問
熱性けいれんは脳や発達に影響が残りますか?
けいれん中、舌をかまないように口に物を入れたほうがいいですか?
救急車を呼ぶか迷ったらどうすればいいですか?
解熱薬を使えばけいれんを防げますか?
また起こすのが心配です。予防はできますか?
何歳ごろまでに起こることが多いですか?
まとめ
熱性けいれんは目の前で起きると動揺しますが、多くは数分でおさまり、経過は良いとされる乳幼児にはめずらしくないものです。大切なのは、起きたときにあわてず、安全を確保して横向きに寝かせ、口には何も入れずに時間と様子を見ること。そして、救急車を呼ぶラインを知っておくことです。
熱性けいれんで押さえておきたいこと
- 起きたら平らで安全な場所に横向きに寝かせ、衣服をゆるめる
- 口には何も入れない・押さえつけない・水や薬を飲ませない
- 始まった時刻と様子(全身か一部か・左右差・持続時間)を見る
- 5分以上続く・繰り返す・意識が戻らない・初めてなどは救急(119)や受診の目安
- 解熱薬はけいれん予防ではなく、つらさをやわらげるために医師の指示で使う
- 迷ったら#8000やかかりつけ医に相談する
「正しく知って、あわてない準備をしておく」ことが、いちばんの支えになります。いつもと様子が違う、判断に迷うと感じたときは、ためらわず相談窓口や医療機関を頼ってください。
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