さい帯血(臍帯血)の提供とは?出産のときにできる寄付の流れと提携産院の探し方|11月17日は世界さい帯血の日
対象の目安: 妊娠中〜出産(提供を考えている方)


「産院でさい帯血バンクのポスターを見かけた」「出産のときに寄付ができると聞いたけれど、赤ちゃんに負担はないの?」——11月17日は「世界さい帯血の日」です。厚生労働省は2026年10月、この日に合わせてウェブサイトで、さい帯血と公的さい帯血バンクの役割を知ってほしいと呼びかけています。さい帯血の提供は、出産を控えた家庭が、その日にしかできない社会への協力のひとつです。この記事では、厚生労働省と日本赤十字社の情報をもとに、さい帯血とは何か、提供できる産院の探し方、提供までの流れ、母子への影響、民間のさい帯血バンクとの違いを整理します。提供するかどうかは家庭ごとに自由に決めてよいことなので、知ったうえで考える材料にしてください。
さい帯血とは?なぜ治療に役立つの?
お母さんと赤ちゃんを結ぶへその緒を「さい帯」といい、さい帯と胎盤の中に含まれる血液を「さい帯血」といいます。お母さんの血液ではなく、生まれてくる赤ちゃんの血液です。通常は、出産後にへその緒や胎盤と一緒に処分されます。
さい帯血には、赤血球・白血球・血小板をつくり出す「造血幹細胞」がたくさん含まれています。造血幹細胞は人工的につくることができないため、白血病などで正常に血液をつくれなくなった患者さんは、健康な人から分けてもらう必要があります。さい帯血を移植することで、血液をつくる力を回復させることができ、これを「さい帯血移植」といいます。厚生労働省は、さい帯血の提供を「赤ちゃんが産まれて初めてできるボランティア」と紹介しています。
さい帯血の定義、赤ちゃんの血液であること、造血幹細胞を含み白血病や再生不良性貧血などの治療に用いられることは、日本赤十字社 造血幹細胞移植情報サービス「よくあるご質問」によります。
「赤ちゃんが産まれて初めてできるボランティア」という表現は、厚生労働省「世界さい帯血の日(World cord blood day)」のページによります。
公的さい帯血バンクの役割と、骨髄バンクとの違い
公的さい帯血バンク(臍帯血供給事業者)は、提携した産科施設で採取されたさい帯血を調製・凍結保存し、患者さんが移植を希望したときに、移植を行う医療機関へ引き渡す事業者です。
骨髄バンクとの大きな違いは、あらかじめ凍結保存しておくかどうかです。
| さい帯血バンク | 骨髄バンク | |
|---|---|---|
| 保存 | 提供されたさい帯血を事前に凍結保存しておく | 骨髄・末梢血幹細胞は保存しない |
| 移植までの流れ | 保存済みのものから選ぶため、ドナーとの調整(コーディネート)が不要 | 型(HLA型)の合うドナーが見つかってから採取する |
| 強み | 移植までの期間が短くなる | — |
日本赤十字社は、病気の進行が差し迫っていてコーディネートを待つことが難しい患者さんにとって、さい帯血によって移植を受けるチャンスが得られると説明しています。移植には患者さんの体重やHLA型に合ったさい帯血を使うため、たくさんのさい帯血を保存しておく必要があります。
公的さい帯血バンクの業務、コーディネートが不要で移植までの期間が短縮されること、骨髄バンクとの違いは、日本赤十字社「さい帯血バンクについて」と「よくあるご質問」によります。
提供できるのは「提携している産科施設」だけ
さい帯血の提供は、どこの産院でもできるわけではありません。移植を受ける患者さんの安全のため、採取には厳格な基準があり、スタッフの訓練や無菌での処理・保存が必要です。そのため、公的さい帯血バンクは産科施設と契約を結んでおり、あらかじめ決められた産科施設でしか提供できません。
日本赤十字社の「公的さい帯血バンクと提携している採取施設」のページでは、次の6つのバンクごとに、提携先の産科施設を調べられるようになっています。
| 公的さい帯血バンク | 掲載されている地域 |
|---|---|
| 日本赤十字社北海道さい帯血バンク | 北海道 |
| 日本赤十字社関東甲信越さい帯血バンク | 宮城県・東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県 |
| 一般社団法人中部さい帯血バンク | 石川県・岐阜県・愛知県・三重県 |
| 日本赤十字社近畿さい帯血バンク | 滋賀県・京都府・大阪府・奈良県・和歌山県 |
| 特定非営利活動法人兵庫さい帯血バンク | 兵庫県 |
| 日本赤十字社九州さい帯血バンク | 福岡県・佐賀県・熊本県・沖縄県 |
掲載されている都道府県でも、すべての産院が提携しているわけではありません。出産予定の産院が提携しているかは、バンクのページで施設名を確認するか、妊婦健診のときに産院に直接たずねるのが確実です。提携施設には、さい帯血バンクのポスターが掲示されていることもあります。
メモ
提供を約束していても、出産の時刻などで採取の体制が整わない場合や、早産の場合などは、採取を行わないことがあります。赤ちゃんとお母さんの安全と健康が最優先です。採取できなかったとしても、気に病む必要はありません。
提供までの流れ
日本赤十字社は、提供までの流れを次のように説明しています。
- 1
説明を聞いて、同意書を書く
提携している産科施設のスタッフから、さい帯血バンクについて説明を受けます。提供すると決めたら、同意書に記入します。提供の条件は、産科施設や問診票で確認されます。
- 2
出産後に、さい帯血を採取する
赤ちゃんとへその緒を切り離したあとで、さい帯と胎盤に残っているさい帯血を採取します。
- 3
お母さんの血液検査
感染症などの検査のため、退院までにお母さんの血液を約10mL採血します。
- 4
検査に合格したさい帯血を保存する
さい帯血の検査とお母さんの血液検査に合格したものが調製され、液体窒素(-196℃)の中で保存されます。
- 5
出産後4か月以降に「健康調査票」が届く
最終チェックとして、さい帯血バンクからお母さんと赤ちゃんの健康状態を確認する「健康調査票」が届きます。
- 6
移植を必要とする患者さんのもとへ
最終チェックで基準を満たしたさい帯血は、病院から移植用の申し込みを受けられるようになり、申し込みがあると患者さんのもとへ届けられます。
採取されたさい帯血は36時間以内に凍結保存しなければならず、保存後は血液学的検査、血液型検査、HLA検査、感染症検査、無菌検査が行われます。これらの検査に合格したものだけが、移植用として提供されます。保存されたさい帯血は、採取から10年の間、移植に使用できます。
赤ちゃんやお母さんへの影響は?
いちばん気になるのは、出産への影響だと思います。日本赤十字社は、さい帯血の採取は赤ちゃんにもお母さんにも負担がかからず安全に行われ、痛みはまったくなく、分娩後の経過にも影響はないとしています。
採取の方法には、胎盤がまだお母さんの体内にあるうちに行う「娩出前の採取」と、胎盤が出たあとに行う「娩出後の採取」の2つがあり、現在は主に娩出前の採取が行われています。娩出前の採取では、専用のバッグを使い、さい帯の表面の血管に針を刺して採取します。さい帯の表面は針を刺しても痛みを感じることはなく、採取は2〜3分程度で終わり、その数分後に胎盤が娩出されます。
ほかにも、よく聞かれる点を日本赤十字社の「よくあるご質問」から整理します。
- 提供するために予定出産になるのか: 産科施設にもよりますが、多くの場合、予定出産になることはないとされています。
- へその緒はもらえるのか: 産科施設によって異なりますが、もらえる場合が多いようです。詳しくは産院に確認してください。
- 後日、追加の検査を頼まれるか: 基本的にはないとされています(健康調査票の返送はあります)。
- 個人情報は守られるか: 移植の手続きはさい帯血に付けられた番号で行われ、個人情報は厳重に管理されます。
公的バンクと民間バンクの違い
さい帯血には、公的さい帯血バンクとは別に「さい帯血プライベートバンク(民間さい帯血バンク)」もあります。目的と使える人がまったく違うので、混同しないよう注意してください。
| 公的さい帯血バンク | 民間さい帯血バンク | |
|---|---|---|
| 目的 | 白血病などの患者さんへの移植 | 本人や家族が将来使う場合に備えた保管 |
| 使える人 | 型の合う患者さん(提供した家族の優先はない) | 契約した本人や家族 |
| 費用 | — | 委託契約を結び、保管費用を支払う |
| 想定される使い道 | 造血幹細胞移植 | 日本赤十字社は「現在はまだ医療技術としては確立されていない再生医療など」への将来の利用に備えるものと説明 |
公的バンクに提供する場合は、さい帯血の所有権を放棄し、移植を必要とする患者さんのために使用することに同意する同意書に署名します。移植を受ける機会の公平さを保つため、提供した家族でも特別に優遇されることはありません。同意を撤回できるのは、患者さんの命にかかわることであるため、「健康調査票」を返送するまでとされています。
民間バンクを検討する場合は、契約内容、保管費用、保管期間、将来の利用の見通しなどを、契約前によく確認しましょう。
民間さい帯血バンクの説明は、日本赤十字社「さい帯血バンクについて」によります。所有権の放棄と同意書、優先使用ができないこと、同意撤回の期限は「よくあるご質問」によります。
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よくある質問
さい帯血はどこの産院でも提供できますか?
さい帯血を提供すると、赤ちゃんやお母さんに痛みや影響はありますか?
提供したさい帯血を、将来自分の子どもや家族のために使えますか?
いつまでに申し込めばいいですか?
提供したあとに、何か連絡は来ますか?
提供したさい帯血は、必ず患者さんに使われますか?
まとめ
さい帯血の提供を考えたら確認したいこと
- さい帯血は赤ちゃんの血液で、白血病などの治療の移植に使われる
- 出産予定の産院が、公的さい帯血バンクの提携施設かを確認した
- 提供の流れ(同意書、採取、お母さんの採血、出産後4か月以降の健康調査票)を知った
- 採取はへその緒を切り離したあとで、母子に痛みや出産への影響はない
- 出産時刻や早産などで、採取できない場合もあると理解した
- 公的バンクへの提供は、家族でも優先して使えないことを理解した
- 家族のための保管を考えるなら、民間バンクの契約内容と費用を確認する
さい帯血の提供は、出産というその日にしかできない協力です。一方で、出産そのものが何より大切なので、提供するかどうかは無理をせず、家族で話し合って決めてください。気になったら、まずは妊婦健診のときに産院で「さい帯血の提供はできますか」とたずねてみるところから始めてみましょう。
世界さい帯血の日(11月17日)の趣旨と、公的さい帯血バンクへの理解を呼びかける内容は、厚生労働省「11月17日は世界さい帯血の日です」によります。
出典・参考
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