子どものマダニ対策|秋の外遊びで知っておきたいSFTS・日本紅斑熱・つつが虫病と、咬まれたときの受診の目安
対象の目安: 1〜6歳

どんぐり拾いに紅葉狩り、デイキャンプ。涼しくなって外遊びが増える秋は、マダニがまだ活発に動いている時期でもあります。さらに秋から初冬にかけては、ダニの一種ツツガムシが媒介する「つつが虫病」の報告も多くなります。とはいえ、必要以上に怖がって外遊びをやめる必要はありません。咬まれにくい服装と行動、帰宅後のチェック、咬まれていたときの正しい対応を知っておけば、備えの多くは家庭でできます。この記事では、厚生労働省と国立健康危機管理研究機構(JIHS)の資料をもとに、2026年のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の報告状況から受診の目安までを整理しました。体調で気になることがあれば、自己判断せず医療機関に相談してください。
2026年のSFTSの報告状況
SFTSは、主にSFTSウイルスを持つマダニに咬まれて感染する病気です。厚生労働省によると、国内で初めて患者が確認された2013年以降、2020年までは毎年60〜100人程度でしたが、2021年以降は毎年100人を超える報告が続いています。JIHSが2026年7月31日現在でまとめた集計では、発病年別で2025年は192例と、2013年以降で最も多い年になりました。
2026年の動きは次のとおりです。数値は感染症週報(IDWR)の、その年の第1週からの累積報告数(速報値)です。
| 時点 | 2026年 | 2025年(同じ週) |
|---|---|---|
| 第23週(6月上旬) | 72例 | 68例 |
| 第35週(8月下旬) | 133例 | 149例 |
6月上旬の時点では前年の同じ週を上回っていましたが、その後は前年のほうが多く推移し、2026年第35週(8月24日〜30日、9月2日集計)の累積は133例で、前年同週(149例)を下回っています。とはいえ、過去最多だった前年に近い水準で報告が続いていることに変わりはありません。週報の数値は報告の遅れにより後から修正されることがあり、確定値ではない点にご注意ください。
報告される地域も広がっています。厚生労働省のQ&Aは、これまで西日本を中心に報告されていたSFTSについて、2025年に関東や北海道で感染した症例が報告され、全国的に感染リスクがあると考えられるとしています。2026年9月7日には、宮城県が県内で初めてとなる患者の発生を発表したと報じられました。
子どもはどのくらい心配すべき?
SFTSの患者は高齢の方に多い病気です。厚生労働省のQ&Aでは、国内の患者の年齢層は5歳〜90歳代で、全患者の約90%が60歳以上、亡くなった患者の多くは50歳以上とされています。JIHSの集計(2026年7月31日現在)でも、届出1,368例のうち20代以下は16例で、届出時点の死亡例はありませんでした。
一方で、厚生労働省はJIHSの研究をもとに、日本のSFTS患者の致命率を27%としています。子どもの報告が少ないからといって「子どもはかからない」わけではなく、5歳の報告もあります。咬まれないための工夫と、咬まれたあとの体調観察は、年齢にかかわらず大切です。
ダニが媒介する主な感染症(早見表)
マダニやツツガムシが媒介する病気はSFTSだけではありません。国内でよく知られるものを並べると次のようになります。
| 病名 | 媒介するもの | 時期・地域の特徴 | 潜伏期間 | 主な症状 |
|---|---|---|---|---|
| SFTS | マダニ(少なくともフタトゲチマダニとキチマダニ)。発症したネコ・イヌからの感染例もある | 4〜8月に多く発症。数は少ないが冬の感染もある | 6日〜2週間程度 | 発熱、食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢・腹痛。時に頭痛、筋肉痛、意識障害、けいれん、出血症状 |
| 日本紅斑熱 | マダニ | 4〜11月に発生。沖縄から東北南部まで | 2〜8日程度 | 発熱・発疹・刺し口が三徴候 |
| つつが虫病 | ツツガムシの幼虫 | 北海道を除く全国。春〜初夏と秋〜初冬の二峰性 | 5〜14日程度 | 高熱・特徴的な刺し口・発疹(感染者の90%以上)、だるさ、頭痛、リンパ節の腫れ |
| ライム病 | マダニ(日本ではシュルツェマダニ) | 北海道や本州中部以北での報告が多い | 通常3〜30日程度 | 皮疹(遊走性紅斑)、筋肉痛、関節痛、発熱 |
日本紅斑熱とつつが虫病は、どちらも抗菌薬で治療が行われる病気です。JIHSは、つつが虫病について治療が遅れると重症化し死亡することがあるとしています。JIHSの2017年の特集では、2007〜2016年の報告患者の年齢中央値はつつが虫病で68歳、日本紅斑熱で70歳と、こちらも高齢の方が中心でした。このほか北海道ではダニ媒介脳炎の患者も報告されています。
秋の外遊びで意識したいのは、つつが虫病の「秋〜初冬」の山です。2026年第35週までの累積はつつが虫病62例、日本紅斑熱334例で、つつが虫病はこれからの季節に報告が増えやすくなります。
マダニがいるのはどんな場所?
マダニは、家の中でふとんや食品に出るダニとは種類が違い、成ダニは吸血前でも3〜8mmほどある比較的大きなダニです。ただし、成長途中の幼ダニや若ダニはもっと小さく、見落としやすいので注意しましょう。JIHSによると、シカやイノシシ、野ウサギなどの野生動物が出没する環境に多く、民家の裏山や裏庭、畑、あぜ道にも生息しています。厚生労働省のQ&Aも、主に森林や草地にいるものの、郊外や市街地にも生息するとしています。
子どもの秋の外遊びに置きかえると、雑木林でのどんぐり拾い、キャンプ場の林のまわり、いも掘りや果物狩りの畑、公園のはずれの草むらなどが、マダニのいる環境に近い場所といえます(編集部の整理)。「山奥に行かないから大丈夫」ではなく、草やぶに近づく遊びをする日は対策をしておくと安心です。
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咬まれないための服装と行動
厚生労働省とJIHSがすすめる基本は「肌の露出を少なくすること」です。子どもに合わせて順番に整えていきましょう。
- 1
長袖・長ズボンで、明るい色を選ぶ
腕や足を出さない服にします。明るい色の服は、付いたマダニを見つけやすくなります。半ズボンやサンダル履きは、マダニがいる場所には向きません。 - 2
裾と袖口のすき間をふさぐ
シャツの裾はズボンの中へ、ズボンの裾は靴下の中に入れます。足を完全に覆う靴をはき、帽子もかぶります。大人は手袋をして袖口をその中に入れると、すき間がさらに減ります。 - 3
首まわりを覆う
JIHSは首にタオルを巻くか、ハイネックのシャツを着ることを挙げています。遊具で遊ぶ公園では、引っかかりにくいハイネックやネックウォーマーのほうが扱いやすいでしょう(編集部)。 - 4
草むらに入り込まない遊び方にする
整備された道を歩き、やぶの中に分け入ったり、草の上にじかに座り込んだりしないようにします。休憩はレジャーシートを敷いた開けた場所で(編集部の提案)。 - 5
虫よけは補助として重ねる
ディートやイカリジンを含む虫よけを、服装と組み合わせて使います。使い方は次の節で年齢別に確認します。
服装の内容は厚生労働省「SFTSに関するQ&A」(Q13)とJIHS「マダニ対策、今できること」によります。遊具での首まわりの選び方と、道の歩き方・休憩場所の工夫は編集部の提案です。
秋とはいえ、日中は汗ばむ日もあります。暑い日に厚着を我慢させるより、薄手の長袖を選ぶ、草地に近づく時間を短くするなど、予定のほうを調整するのがおすすめです。
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虫よけ成分の年齢別ルール
JIHSによると、マダニに対する虫よけ(忌避剤)は2013年から認可され、現在はディートとイカリジンの2種類の有効成分を含む製品が市販されています。ただし、使うことでマダニの付着数は減るものの、付着を完全に防ぐわけではありません。JIHSは、虫よけを過信せず、ほかの対策と組み合わせるよう呼びかけています。
| 成分 | 子どもへの使い方 | 補足 |
|---|---|---|
| ディート | 6か月未満は使用しない。6か月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回が目安。顔には使用しない | 濃度30%の製品は12歳未満に使用しない。高濃度ではプラスチック・化学繊維・皮革を傷めることがある |
| イカリジン | 年齢制限なし | 各製品の用法・使用上の注意に従う |
もう1つ確認したいのが、パッケージの「適用害虫」です。先のトラベルクリニックの資料では、ディートの適用害虫にツツガムシが含まれる一方、イカリジンの一覧にはツツガムシが入っていません。ただし、この資料が紹介しているディートは濃度30%の製品(適応年齢12歳以上)で、1〜6歳の子どもには使えません。「ディートならツツガムシにも対応」とは限らないので、子ども向けの低濃度の製品を選ぶときは、パッケージの適用害虫欄と対象年齢の表示をそれぞれ確認しましょう。つつが虫病の発生が多い地域で秋に草地へ入る予定があるなら、なおさら見ておくと安心です。
使うときは製品の使用上の注意に従い、ディートは顔に使わない、目に入ったりなめたりしないようにする、といった点を守りましょう。成分ごとの製品の選び方は、別の記事で詳しくまとめています。
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帰宅後のチェックと入浴
マダニは皮膚に口器をしっかり刺して、数日から長いものでは10日間以上吸血を続けますが、刺されても気づかないことが多いとされます。外遊びのあとの「玄関とお風呂」でのひと手間が、早く見つけるいちばんの近道です。
- 上着は家の中に持ち込まず、玄関先で脱ぐ
- 服についたダニは、ガムテープや粘着カーペットクリーナーで取り除く
- シャワーや入浴のときに、体にダニが付いていないか確認する。付着したマダニは「できもの」のように見えることがある
入浴時に見ておきたい場所
- 首まわり
- 耳(耳の後ろも)
- わきの下
- 足の付け根
- 手首
- 膝の裏
- 髪の生え際や、ウエストのゴムが当たるところ
小さな子は、自分では咬まれたことに気づけません。当日の入浴で見落としても、翌日以降の着替えのときに「ほくろが増えた?」と感じたら、よく見てみてください。
咬まれていたら:自分で無理に取らない
吸血中のマダニを見つけたら、慌てて引き抜かないことが大切です。
注意
厚生労働省は、吸血中のマダニを無理に引き抜こうとすると、マダニの一部が皮膚の中に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させて病原体が体内に入りやすくしてしまうおそれがあるとして、医療機関(皮膚科など)で除去や洗浄などの処置を受けるよう呼びかけています。
また、マダニに咬まれたあとは数週間程度は体調の変化に注意し、発熱などの症状が出たらすみやかに受診して、マダニに咬まれたことを医師に伝えてください。
受診までの間、家庭でできることは次のとおりです(編集部の整理)。
- 1
触らず、かかせない
つぶしたり、ピンセットやアルコールでいじったりせず、そのままにします。子どもが気にしてさわらないよう、服で軽く覆っておきます。 - 2
記録を残す
見つけた日時、咬まれた場所の写真、数日以内に行った場所(公園・キャンプ場・畑など)をメモしておくと、受診時に伝えやすくなります。 - 3
受診先を確認する
まずは皮膚科へ。すぐに受診先が見つからないときは、かかりつけの小児科に電話で相談してみてください。受診を迷うときは、子ども医療電話相談(#8000)も利用できます(実施時間帯は都道府県ごとに異なります)。 - 4
数週間は体調を見る
処置が済んでも、その後数週間は熱や発疹、食欲などの変化に気をつけます。
なお、全てのマダニがSFTSウイルスを持っているわけではありません。厚生労働省によると、国内でマダニのウイルス保有率は地域や季節によって違いがあるものの0〜数%です。咬まれたからといって必ず病気になるわけではないので、落ち着いて処置と体調観察をしましょう。
受診を考える目安
外遊びや自然体験のあと数週間のうちに、次のような様子があれば医療機関を受診してください。
メモ
- 発熱がある
- 体に発疹が出てきた
- 虫に刺されたような跡や、黒いかさぶたのような刺し口がある
- 食欲がない、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛がある
- 頭痛や筋肉痛を訴える、いつもよりぐったりしている
受診時には、「マダニに咬まれた(かもしれない)」「いつ、どこで外遊びをしたか」「ペットの飼育状況や動物との接触」を伝えてください。意識がおかしい、けいれんを起こした、呼びかけへの反応が鈍いといった場合は、ためらわず救急要請(119)を検討してください。
厚生労働省のQ&Aは医療機関向けの項目で、患者がマダニに刺されたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も多くあるとしています。「咬まれた覚えはないけれど、草むらで遊んだ」という情報も、診断の手がかりになります。
ペット(犬・猫)からの注意
SFTSは、発症したネコやイヌから人にうつることもあります。厚生労働省によると、SFTSウイルスに感染して発症している動物の血液や唾液などの体液に直接触れた場合に感染する可能性があり、ネコに咬まれて感染した事例も報告されています。一方で、発症していないネコやイヌ、屋内のみで飼育されているネコやイヌから人が感染した事例はこれまで報告されていません。また、ペットに付いているマダニに触れただけで感染することはないとされています。
犬の散歩や、猫を外に出す家庭では、次の点を習慣にしておきましょう。
- ペットがマダニに刺されないよう、ダニ駆除剤についてかかりつけの獣医師に相談する
- 散歩後はペットの体をチェックし、目の細かいくしをかける。しっかり食い込んだマダニは無理に取らず、獣医師に取ってもらう
- ペットの具合が悪いときは、マスクや手袋をつけ、咬まれたりなめられたりしないよう注意して動物病院へ
- 動物に触ったら必ず手を洗う。口移しでエサを与える、ふとんに入れて一緒に寝るといった過剰な触れ合いは控える
- 野生動物や、動物の死体には触らない
子どもには「外で会った動物をむやみに触らない」「触ったら手を洗う」を、ふだんの約束にしておくと安心です(編集部)。
よくある質問
公園や自宅の庭でもマダニに咬まれることはありますか?
寒くなればマダニの心配はなくなりますか?
マダニを自分で取ってしまいました。どうすればいいですか?
虫よけは服の上から使ってもいいですか?
日本紅斑熱やつつが虫病に予防接種はありますか?
吸血して大きくなったマダニはどれくらいの大きさですか?
まとめ:秋の外遊びは「着る・見る・取らない」
マダニやツツガムシを完全に避けることはできませんが、服装で肌を覆い、帰宅後に見て、咬まれていたら無理に取らず受診する、という3つを押さえておけば、秋の外遊びを必要以上に控える必要はありません。
おでかけ前後の確認リスト
- 長袖・長ズボン・明るい色の服と、足を覆う靴を用意した
- シャツの裾はズボンに、ズボンの裾は靴下に入れた
- 虫よけの成分・対象年齢・使用回数・適用害虫を確認した
- 帰宅したら上着を玄関で脱ぎ、入浴時に首・耳・わきの下・足の付け根・膝の裏を見た
- 咬まれていたら無理に取らず皮膚科などへ。数週間は体調の変化に注意する
- ペットのダニ対策を獣医師に相談した
紅葉を見に行く日の服装や持ち物は、こちらの記事も参考にしてください。
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子連れの紅葉狩りを楽しむ|2026年の見頃の目安、疲れにくい場所選びと寒暖差に備える服装
出典・参考
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について/厚生労働省
- 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A(第8版・令和7年11月21日作成)/厚生労働省
- マダニ対策、今できること/国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
- 感染症発生動向調査で届出られたSFTS症例の概要(2026年7月31日現在・PDF)/国立健康危機管理研究機構(JIHS)
- 感染症週報(IDWR) 2026年第35週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 感染症週報(IDWR) 2025年第35週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 感染症週報(IDWR) 2026年第23週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 感染症週報(IDWR) 2025年第23週(PDF)/厚生労働省・国立健康危機管理研究機構
- 日本紅斑熱/国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
- つつが虫病/国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
- ライム病/国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト
- IASR 38(6), 2017【特集】つつが虫病・日本紅斑熱2007〜2016年/国立健康危機管理研究機構(JIHS)
- ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について/厚生労働省
- 蚊やダニに刺されないために(2024年9月情報更新・PDF)/国立国際医療研究センター(現・JIHS国立国際医療センター)トラベルクリニック
- マダニ媒介のウイルス感染症「SFTS」 宮城で患者を初確認(2026年9月7日)/河北新報オンライン
- 子ども医療電話相談事業(#8000)について/厚生労働省
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