子どもの弱視は3歳児健診が勝負どころ|目の検査でわかること・家庭で気づけるサイン
対象の目安: 3歳ごろ(3歳児健診の時期)

10月10日は「目の愛護デー」。日本眼科医会の案内では、一部の都道府県でこの日にちなんだ一般向けのイベントが企画されています。そこで今回は「弱視(じゃくし)の早期発見」を取り上げます。カギを握るのは3歳児健診の視覚検査です。検査の中身と家庭で気づけるサインを一次情報から整理しました。気になることがあれば自己判断せず眼科に相談してください。
弱視とは|視力は「くっきり見ること」で育つ
日本眼科医会の手引きでは、視力は生後3か月で0.02、1歳で0.2、3歳で0.6〜0.9、5歳で1.0以上になるとされています。同会マニュアルは生後3か月頃で0.05、2歳で0.4、6歳までに1.0程度としており、測定方法により値は異なります。視力は「目」だけでなく「脳」の育ちでもあり、くっきりした像が網膜に届いて脳が刺激を受けることで発達します。
この発達には感受性期があります。感受性は生後3か月から1歳6か月にかけて最も高く、3歳を過ぎると次第に減衰します。この時期に強い遠視や乱視、左右の度数差、斜視、白内障などで「くっきり見る」ことが妨げられると、視力の成長の階段を登り切れず止まります。これが弱視です。
感受性期がいつまで続くかは資料によって幅があります。日本眼科医会の手引きは「生後すぐ〜8歳くらい」、同会マニュアルの図も6歳〜8歳ぐらいで感受性が低下すると示す一方、日本弱視斜視学会は臨界期(感受性期)を10歳頃までとしています。共通するのは、早く始めるほど治療に反応しやすいことです。8歳を過ぎたから手遅れだと自己判断せず、気になった時点で眼科に相談してください。
メモ
日常語の「弱視」は矯正できない低視力全般を指し、眼科の医学用語とは範囲が異なります。この記事は医学用語としての弱視の話です。
3歳児健診の視覚検査は3段階|家庭・会場・眼科
母子保健法施行規則第2条は、3歳児健診の項目に「眼の疾病及び異常の有無」を定めています。視覚検査は一般に、家庭での一次検査、会場での二次検査、眼科での精密検査の3段階です。
一次検査(家庭)|ランドルト環と問診票
家庭では、2.5mの距離で視力0.5に相当するランドルト環(「C」の切れ目の向きを答える視標。一部で絵視標)を使い、保護者が左右それぞれの視力を検査します。あわせて問診票に、気になることを記入します。
家庭での視力検査でおさえたい点
- 必ず片眼ずつ測る。のぞき見をしないよう、手ではなく眼帯などでしっかり隠す
- 「片方は見えたから大丈夫」ではなく、見え方に左右差がないかを確かめる
- 答え方も練習する。3歳6か月以下は回答用の輪(ハンドル)を切れ目の向きに合わせる方法、3歳7か月以上は手や指で答える方法が向くとされる
- 明るい部屋で行う(薄暗い部屋・まぶしすぎる部屋は避ける)
- 本番の2.5mは目測ではなくメジャーで測る
- 近い距離で対面して何回か練習してから本番へ。機嫌のよいときに行う
- どうしてもできないときは無理強いせず、別の日に行う
一次検査の方法と留意点は日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」第2章・第3章、回答用ハンドルは同第4章、回答方法の月齢別の使い分けは日本弱視斜視学会「3歳児健診のご案内」によります。
二次検査(健診会場)|再検査と医師の診察
会場では問診票と視力検査の結果を回収します。家庭で検査ができなかった場合や、左右の眼のいずれかでも0.5の視力が確認できなかった場合は再検査を行い、屈折検査を導入していれば受診した子ども全員に実施します。医師の診察を経て、手引きは次のいずれかで精密検査の受診を勧めるとしています。
- 問診票に一つでも該当項目があった場合
- 視力の再検査において検査ができないか、左右の眼いずれかでも0.5の視力が確認できない場合
- 屈折検査で異常あり判定の場合
- 医師の診察で異常所見がある場合
手引きは「二次検査では『経過観察』としない」とも明記しています。必要なのに保留にすると、精密検査の適切なタイミングを逃しかねないためです。家庭で検査ができなかった場合は会場か家庭で再検査を行い、それでもできなければ要精密検査とします。
3歳児健診では0.5以上を正常範囲としています。正常に発達している子でも3歳0か月では約半数しか1.0に達しないためです。実施時期は検査可能率と視力の発達から3歳6か月が望ましいとされています。
屈折検査機器でわかること・わからないこと
近年広がっているのが屈折検査機器(スポットビジョンスクリーナー等のフォトスクリーナー)です。子どもの応答に頼らず、数秒程度で遠視・近視・乱視の度数や左右差、目の位置のずれを推測できます。
導入は全国で進みました。日本眼科医会の手引きが引く悉皆調査では、導入市区町村は令和4年10月1日時点で70.0%。こども家庭庁の資料では令和5年度(2023年8月時点)の都道府県別実施率の全国平均が85.7%。調査主体も集計方法も異なるため、差をそのまま伸び幅とは読めません。
後押しは、国の母子保健対策強化事業に健診の備品(屈折検査機器等)の整備が位置づけられたことです。ただし実施率には都道府県差があり、方法も自治体で異なります。
一方で限界もあります。屈折検査機器では視力そのものは測れません。検出できるのは屈折異常と眼位異常で、スポットビジョンスクリーナーでは中間透光体の混濁(白内障など光の通り道の濁り)を検出できません。検査が終了しないときは異常と判定します。マニュアルにも「屈折検査導入により視力検査を廃止すると考えてはならない」と明記されています。
注意
屈折検査はあくまでスクリーニングで、健診の場で度数や病名の詳しい説明は行わない運用です。結果が精密検査と異なることもあり、導入すると要精密検査となる子は10%前後に増えます。「引っかかった=弱視」ではないので、落ち着いて眼科を受診してください。
要精密検査が10%前後に増えることと、健診の場で屈折値や疾患名の詳しい説明を控える運用は日本眼科医会の手引きのコラム、後者は同会マニュアル第6章にも記されています。
「見えていそう」な子ほど、片眼の弱視は気づかれない
3歳児健診でいちばん見つけたいのは、左右の度数差による片眼の弱視(不同視弱視)です。よく見えるほうの眼で補うため、日常生活ではほとんど気づかれません。幼児は視力が0.3程度あれば生活に困らず、生まれたときからその見え方なので比べる基準も持ちません。だからこそ片眼ずつの検査が意味を持ちます。「見えているから大丈夫」は根拠になりません。
家庭で気づけるサイン
問診票の項目は、目の病気や視力不良を見つけるために作られています。次のような様子があれば健診を待たずに眼科へ。
| 気づく様子 | 疑われること |
|---|---|
| 目つきや目の動きがおかしい | 視力不良や斜視 |
| 黒目が内側に寄る、外・上・ななめ上にずれる | 内斜視、外斜視、上下斜視 |
| 物に極端に近づいて見る、目を細める | 視力不良 |
| 物を見るとき頭を傾ける、横目で見る | 斜視、眼振、まぶたの異常 |
| 明るい屋外で片目をつぶる | 間欠性外斜視 |
| ひどくまぶしがる | さかさまつげ、眼内の炎症、白内障など |
| 黒目の中心が白っぽく見える | 白内障、網膜芽細胞腫、網膜剥離 |
| 黒目の大きさが左右で違う、目が揺れる、まぶたが下がる | 緑内障、眼振、眼瞼下垂など |
表の項目とねらいは日本眼科医会「3歳児健診における視覚検査マニュアル」第3章のコラム「アンケート(問診票)のねらい」によります。親やきょうだいの弱視・斜視・目の病気も問診票で確認されます。
「要精密検査」と言われたときの流れ
精密検査依頼票を受け取ったら、別の日に眼科を各自受診します。自治体は結果報告書で受診状況を確認しています。「行かないまま」が一番避けたい選択です。
- 1
眼科で精密検査を受ける
目薬で調節(ピント合わせ)を休ませた状態で正確な屈折値を測り、視力・眼位・目の中の状態を確認します。まぶしさやぼやけが残るため、受診後の予定は余裕をもって。 - 2
治療用眼鏡をつくる(必要な場合)
弱視治療の中心は屈折矯正、つまりその子に合った眼鏡の常用です。処方の1〜2か月後に、常用できているか、眼鏡での視力や眼位を確認します。 - 3
必要ならアイパッチ(健眼遮閉)を併用する
左右差がある場合は、よく見えるほうの眼を隠して弱いほうを使わせることがあります。不同視弱視では1日2〜3時間程度から始め、中止するときも急にやめません。 - 4
経過観察を続ける
治療後も一定期間の経過観察が必要です。間隔や期間は主治医の指示に従ってください。
精密検査の流れ、屈折矯正を中心とする治療、不同視弱視で健眼遮閉を1日2〜3時間から始め漸減して中止することは日本眼科医会マニュアル第7章によります。
治療用眼鏡には療養費の制度がある
医師が必要と認めた小児の弱視・斜視・先天性白内障術後の治療用眼鏡等は、購入費用について健康保険から療養費が支給されます。いったん全額を立て替え、後日申請する償還払いです。対象は9歳未満、上限額40,492円(令和6年4月以降)のうち健康保険の負担分が支給されます。アイパッチとフレネル膜プリズムは対象外です。
対象年齢9歳未満、上限額40,492円(令和6年4月以降)、対象外の品目、再支給の条件は日本眼科医会「小児弱視等の治療用眼鏡等に関する療養費の支給について」によります。
受けそびれた・引っ越したときは、必ず自治体に確認を
3歳児健診は市町村が実施主体で、屈折検査の有無や実施月齢、集団か個別かも自治体で異なります。案内が来ない、期限を過ぎた、引っ越した、というときは市区町村の母子保健担当(こども家庭センター等)へ。健診で受けられなくても、眼科での相談という道は残っています。
あわせて読みたい
乳幼児健診の内容と当日の流れ・準備|1歳6か月児健診・3歳児健診で見ていること
よくある質問
屈折検査があるなら、家の視力検査はやらなくてもよいですか
家で視力検査をしても、子どもがふざけてできません
健診の前に家庭で気づけるサインはありますか
「要精密検査」でしたが、本人は普通に見えていそうです
3歳児健診で見つからず、もう8歳を過ぎました。手遅れですか
眼鏡をかけたら視力が下がりませんか
治療用眼鏡の療養費は何度も申請できますか
まとめ|封筒が届いたら、まずランドルト環から
弱視は、痛くもかゆくもなく、本人も訴えません。だからこそ健診で見つけにいきます。視覚検査は家庭から始まっていて、2.5mを測って片眼ずつの数分の手間がその入口です。
3歳児健診で発見して治療を続けられれば、多くの子が就学までに眼鏡をかけた状態での視力を十分に伸ばせるとされています。案内が届いたら、まずランドルト環の紙を開いてみてください。時期を過ぎていても、年齢を理由に諦めず眼科に相談を。
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子どもの近視予防|外遊びの時間・目と物の距離・スクリーンとの付き合い方
出典・参考
- 3歳児健診における視覚検査マニュアル〜屈折検査の導入に向けて〜(令和3年7月)/日本眼科医会(監修:日本小児眼科学会・日本弱視斜視学会・日本視能訓練士協会)
- 3歳児健康診査における視覚検査の円滑な実施と精度管理の手引き/日本眼科医会
- 弱視・屈折検査(令和6年度こども家庭庁母子保健指導者研修会・乳幼児健康診査に関する研修2)/日本眼科医会(柏井真理子)
- 3歳児健診の視覚検査/日本視能訓練士協会
- 弱視/日本弱視斜視学会
- 3歳児健診のご案内/日本弱視斜視学会
- 小児弱視等の治療用眼鏡等に関する療養費の支給について/日本眼科医会
- 乳幼児健診に関する取組み/こども家庭庁
- 母子保健法施行規則(昭和四十年厚生省令第五十五号)/e-Gov法令検索
- 目の愛護デー/日本眼科医会
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