子どもの秋冬の乾燥肌ケア|保湿はいつ・どのくらい塗る?入浴・室内の湿度と受診の目安
対象の目安: 0歳〜未就学児ごろ

9月に入って空気が乾き始めると、子どものほおやすねがカサカサしてきた、お風呂上がりに脚をかいている、といった変化に気づく方が増えてきます。秋冬の乾燥肌は「体質だから仕方ない」と思われがちですが、保湿の量とタイミング、入浴の仕方、室内の環境を整えるだけでかなり落ち着くことも少なくありません。この記事では、日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」、厚生労働省・文部科学省の環境基準などをもとに、家庭でできることと受診を考えたい目安を整理しました。肌の状態は月齢や体質で大きく違います。迷ったときはかかりつけの小児科や皮膚科に相談してください。
なぜ秋冬に乾燥するのか
皮膚は、角層細胞間脂質や天然保湿因子による「水分保持機能」と、皮脂や汗がつくる膜による「表皮被覆機能」の両方で乾燥から守られています。日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」は、この働きが崩れて皮膚が乾燥した状態を皮脂欠乏症(乾皮症と同義)と定義し、要因を生理的要因・環境要因・非生理的要因の3つに整理しています。
秋冬に増えるのは環境要因です。外気の乾燥と室内暖房による低湿度環境がそろうと角層の水分量が下がり、皮膚から水分が逃げていきます。手引きはこの状態を「冬期乾皮症」と呼びます。熱すぎるお湯での長風呂、脱脂作用の強い洗浄料、こすり洗いといった不適切なスキンケアも、環境要因として挙げられています。
| 秋冬に効いてくる要因 | 肌に起きていること | 家庭での打ち手 |
|---|---|---|
| 外気の乾燥 | かさつき・粉ふき | 保湿の回数を増やす |
| 暖房による低湿度 | 室内でも水分が蒸散し続ける | 加湿器・洗濯物の室内干し |
| 熱いお湯・長風呂 | 皮脂や天然保湿因子が溶け出す | 湯温38〜40℃・長湯を避ける |
| 洗いすぎ・こすり洗い | バリア機能がさらに低下 | 泡でやさしく洗う |
| かき壊し | 湿疹化(皮脂欠乏性湿疹)・細菌感染 | 爪を短く・早めにかゆみをケア |
乳幼児の肌はもともと乾きやすい
同じ手引きは、皮脂欠乏症を来す生理的要因の一つとして「乳幼児・小児では皮膚生理機能の未成熟」を挙げ、角層水分含有量が低く、皮膚から水分が逃げる量(経表皮水分蒸散量)が増えやすいことを示しています。皮表の脂質量も、乳児や小児は成人より少ないことが知られているとしています。もともと守りが手薄なところに秋冬の乾燥がのしかかるため、特別に肌が弱いわけでなくてもこの時期にカサつくのは珍しくありません。
保湿剤の剤形を、季節と部位で使い分ける
保湿剤は「何を使うか」より前に「どんな形状(剤形)か」で使い心地と守りの強さが変わります。診療ガイドラインは、保湿・保護を目的とした外用薬を、皮表の保湿を主とするもの(ヘパリン類似物質含有製剤や尿素製剤など)と、皮表の保護を主とするもの(白色ワセリンや亜鉛華軟膏など)に大きく分けています。
| 剤形 | 使い心地 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ローション | さらっと軽い | 汗ばむ時期、頭皮や毛の多い部分 |
| 乳液・ミルク | のびがよく重すぎない | 秋口の入り、日中の塗り足し |
| クリーム | しっとり感が続く | 秋冬の全身ケアの主力 |
| 軟膏(ワセリンなど) | ベタつくが保護力が高い | 口まわり・ほお・おしりなど |
夏はローションで足りていても、秋が深まると追いつかなくなることがあります。「秋はクリームに切り替え、乾燥が強い部分だけ軟膏を重ねる」という組み立てが実用的です。なお手引きは、剤形が豊富で価格の幅も大きいことから、使用感に満足して安心して継続して使える製品を用いることが重要だとしています。
メモ
医療用の保湿剤と市販薬・医薬部外品・化粧品では成分も位置づけも異なります。湿疹がある、かゆみが強い、市販品で改善しないという場合は、自己判断で続けずに受診するほうが近道です。
塗る量とタイミング|「少しテカる程度」を1日2回
「塗っているのに効かない」の多くは量不足です。目安がFTU(フィンガーチップユニット)で、1FTUは口径5mmのチューブから大人の人さし指の先端から第1関節まで押し出した量(約0.5g)。これで大人の手のひら2枚分、体表面積のおよそ2パーセントに塗るのが適量とされています。ローションなら手のひらに1円玉大でおよそ0.6gです。
大人の適正量は、片側の腕で約3FTU、背中で約7FTU、片側の脚で約6FTU、片足で約2FTUが概算です。子どもは体表面積が小さいぶん必要量は少なくなりますが、年齢別の数値が定まっているわけではありません。手引きは実際上の指導として「少しテカテカする程度に塗る」という表現を挙げています。ティッシュを当てて軽く張り付くくらい、と覚えておくと分かりやすいでしょう。
- 1
お風呂上がりにまず1回
入浴後は角層から水分が蒸散するため、上がったらできるだけ早く塗ります。アレルギーポータル(日本アレルギー学会)は入浴後すぐ(5分以内)に塗るのがよいとしています。タオルで水気を押さえたら着替えの前に塗る、という流れにすると忘れません。 - 2
朝も1回、合計2回に
ガイドライン2024は、外用回数について1日1回より1日2回(朝・夕)のほうが保湿効果は高いとしています。朝の着替えを2回目にすると習慣にしやすくなります。 - 3
少量を広くではなく、たっぷりのばす
手のひらに取り、線を引くように置いてなでのばします。すりこまず、しわに沿ってやさしく広げ、最後に肌が少しテカっているかを確認します。 - 4
見落としやすい部分も忘れずに
かさつきが目立つのはすね・太もも・おなか・背中・ほお。おむつの中や首のくびれ、耳のうしろは見落としやすいので着替えのついでに確認します。
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入浴の仕方で、乾燥は変わる
清潔にすること自体は大切ですが、洗い方しだいで乾燥は良くも悪くもなります。ガイドラインは、皮膚バリア機能回復の至適温度として38〜40℃を挙げ、42℃以上の湯温は皮脂や天然保湿因子の溶出が生じ、かゆみも引き起こされるため推奨できないとしています。冬は脱衣所や浴室を先に温めておけば湯温を上げずに済みます。
洗浄料の主成分は界面活性剤で、過度な使用やすすぎ残しは乾燥を悪化させる可能性があるとされています。手引きは、ナイロンタオルやブラシによる清拭は角層からの水分蒸散を増やし乾燥を助長するため使わず、石けん・洗浄剤はよく泡立てて泡を手のひらに取りやさしく洗うよう指導するとし、乾燥が強い部位への使用は最小限が望ましいとしています。
秋冬のお風呂で気をつけたいこと
- 湯温は38〜40℃。42℃以上にしない
- 長湯を避ける。浴室と脱衣所を先に温めておく
- 洗浄料はよく泡立て、手のひらの泡でなでるように洗う
- ナイロンタオル・ブラシ・ゴシゴシ洗いをしない
- 首のくびれ・わきの下・ひじひざの内側・おしりのすすぎ残しに注意
- 乾燥が強い部分(すね・太ももなど)は洗浄料を毎日使わなくてもよい
- 上がったらタオルで押さえて水気を取り、5分以内に保湿
湯温38〜40℃と42℃以上を推奨しない理由は「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」、ナイロンタオルを使わず泡でやさしく洗う指導は「皮脂欠乏症診療の手引き2021」によります。
室内の湿度と暖房|数値の目安をどう考えるか
暖房を使うと室内の相対湿度は下がります。手引きも「冬期の暖房により室内の相対湿度が低下することから、適宜加湿器等による対策も必要である」と明記しています。家庭向けの公的な湿度基準はありませんが、根拠のある数値として次の2つが参考になります。
- 厚生労働省の建築物環境衛生管理基準(建築物衛生法)では、空気調和設備のある特定建築物の居室について、温度18℃以上28℃以下、相対湿度40パーセント以上70パーセント以下。
- 文部科学省の学校環境衛生基準(令和8年2月27日告示第35号の改正反映版)では、教室等の温度は18℃以上28℃以下、相対湿度は30パーセント以上80パーセント以下が望ましいとされています。
どちらも家庭を対象にした基準ではありませんが、「40〜60パーセントを目安に、少なくとも30パーセントを下回らない」と考えると実用的です。子どもが過ごす部屋に湿度計を1つ置き、数字を見ながら加湿器や洗濯物の室内干しで調整しましょう。
ヒント
暖房の風が直接当たる場所は、その一帯だけ極端に乾きます。ベビーベッドや遊びスペースが吹き出し口の正面に来ていないか、一度見直しておきましょう。
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「乾燥肌」と「アトピー性皮膚炎」は何が違うのか
手引きによれば、乾燥した皮膚をかき壊すことを繰り返して炎症が起きると湿疹化し、これを皮脂欠乏性湿疹と呼びます。生理的な要因による皮脂欠乏症の好発部位は両下肢の伸側(すねの側)で、背中や腕にも出ることがあり、皮脂や汗の多い顔や間擦部には出にくいとされています。
一方アトピー性皮膚炎は、日本皮膚科学会の定義・診断基準で「増悪と軽快を繰り返す、瘙痒(かゆみ)のある湿疹を主病変とする疾患」とされ、(1)かゆみ、(2)特徴的な皮疹と分布、(3)慢性・反復性の経過、の3項目をすべて満たすものとされます。慢性の目安は乳児では2か月以上、それ以外では6か月以上。皮疹は乳児期には頭や顔から始まってしばしば体幹・四肢に下降し、幼小児期は首や手足の関節部に出やすいとされています。
家庭で見分ける大まかな目安は、「すねや腕が季節的にカサついてかゆい」のか、「顔や関節のくぼみに湿疹が出て、良くなったり悪くなったりを何か月も繰り返している」のか、という違いです。ただし診断は医師が行うもの。判断がつかないときは、様子を見続けるより一度診てもらうほうが結果的に早く落ち着きます。
注意
次のようなときは家庭でのケアを続けるより受診を検討してください。かゆみで夜中に何度も起きる・眠れない、かき壊して出血したりじくじくしたりしている、湿疹が広がる・何週間も引かない、保湿を続けても改善しない、水ぶくれやかさぶたが急に広がる(とびひが疑われる)。日本小児皮膚科学会は、とびひは湿疹などをかき壊した傷に細菌が感染して起こると説明しています。乾燥によるかき壊しも同じ入口です。
「新生児期からの保湿でアトピーを予防できる」は、いま何と言われているか
2014年に日本と欧米からそれぞれ報告された臨床試験で、新生児期から保湿剤を塗るとアトピー性皮膚炎の発症が有意に減ったとされ、大きな話題になりました。この話はいまも「保湿すれば予防できる」という形で広まっていますが、その後の研究で評価は変わっています。
日本皮膚科学会・日本アレルギー学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」は、CQ25「アトピー性皮膚炎の発症予防に新生児期からの保湿剤外用はすすめられるか」に対し、「現時点においてアトピー性皮膚炎の発症予防に新生児期からの保湿剤外用は一概にはすすめられない」(推奨度2、エビデンスレベルB)と示しています。解説では、2014年の2件のあと予防効果を支持する試験と否定する試験がそれぞれ複数報告されて相反するエビデンスが示され、直近のメタアナリシスでも効果は明示できていないこと、対象・試験規模・保湿剤の内容・地域の気候によって結果が左右される可能性が述べられています。
「皮脂欠乏症診療の手引き2021」も同じ論点をCQ6として扱い、推奨文は「アトピー性皮膚炎の発症予防目的での皮脂欠乏症のない児への保湿剤塗布はすすめられない」です。解説では、2020年の欧米の大規模ランダム化比較試験(BEEP試験)で2歳までの累積発症率も1歳・2歳時点の有病率も有意に低下しなかったこと、同年の北欧の大規模試験(PreventADALL)ではセラミド含有の保湿剤でも12か月までの累積発症率を下げられなかったことが挙げられています。
メモ
大事なのは、「保湿そのものが無意味」という話ではないことです。同手引きは同じCQ6の中で、いずれの研究でも保湿剤使用による重大な有害事象の増加はなく、皮脂欠乏症の治療目的での乳幼児への保湿剤の使用を制限するものではない、と明記しています。乾燥している肌に塗ることや湿疹の再燃予防のために続けることは別の話として推奨されています(治療目的の外用はガイドライン2024のCQ24で推奨度1・エビデンスレベルA)。「乾いているから塗る」は続けてよい、「まだ乾いていない赤ちゃんに予防のために塗る」は現時点でははっきり推奨できない、という整理です。
ステロイド外用薬への向き合い方
湿疹ができている場合には、医師の判断で抗炎症作用のある外用薬が処方されることがあります。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aは、ステロイド外用薬について、恐がってきちんと塗らないと十分に炎症を抑えられず、かえって使用期間や使用量が増えてしまうこと、疑問や不安が多いときは皮膚科を専門とする医師とよく話し合って納得したうえで使ってほしいことを述べています。
家庭でできるのは、自己判断で急に中断しないこと、塗った期間や範囲を記録して受診時に伝えること、不安はその場で質問することです。量や薬剤の選択を自己判断で変えないでください。
よくある質問
保湿剤は何月から始めればいいですか
朝は時間がありません。1日1回でもいいですか
顔とからだで保湿剤を分けたほうがいいですか
毎日お風呂に入れないほうが乾燥しませんか
加湿器を使うと結露やカビが心配です
きょうだいで同じ保湿剤を使い回してもいいですか
保湿していても粉をふきます。使い方が悪いのでしょうか
入浴剤は乾燥にいいのでしょうか
まとめ|この秋に始める3つのこと
秋冬の乾燥肌ケアは「量・タイミング・環境」の3点を整えるほうが効きます。剤形を季節に合わせて見直し、入浴直後の1回を必ず確保し、部屋の湿度を数字で管理する。これだけでも真冬のかき壊しはかなり減らせます。
今週からできること
- 手持ちの保湿剤を確認し、乾燥が強い部位はクリームや軟膏に切り替える
- お風呂上がりの保湿を、着替えの前のルーティンに組み込む
- 塗ったあとに肌が少しテカっているかを毎回チェックする
- 湯温を38〜40℃に設定し、脱衣所と浴室を先に温める
- 子どもが過ごす部屋に湿度計を置き、40〜60パーセントを目安に調整する
- 爪を短く整え、かき壊しを予防する
- かゆみで眠れない・湿疹が続くときの相談先(かかりつけの小児科・皮膚科)を決めておく
乾燥肌は季節が変われば落ち着くことも多い一方、かき壊しから湿疹やとびひに進むと治るまでに時間がかかります。「まだ大丈夫」と様子を見続けるより早めに手当てするほうが、子どもも大人も夜がラクになります。判断に迷うことがあれば、必ずかかりつけの小児科や皮膚科に相談してください。
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子どもの秋の衣替え|時期は気温で決める・サイズ見直しと安全チェックの手順
出典・参考
- 皮脂欠乏症診療の手引き2021/日本皮膚科学会
- アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024/日本皮膚科学会・日本アレルギー学会
- 一般公開ガイドライン(診療の手引き一覧)/日本皮膚科学会
- 皮膚科Q&A「アトピー性皮膚炎」Q24 スキンケアについて教えてください/日本皮膚科学会
- 皮膚科Q&A「アトピー性皮膚炎」Q14 どうしてもステロイド外用薬をつけるのが怖いのですが/日本皮膚科学会
- アトピー性皮膚炎とは/アレルギーポータル(日本アレルギー学会)
- アトピー性皮膚炎|基礎知識/東京都アレルギー情報navi.(東京都保健医療局)
- 建築物環境衛生管理基準について/厚生労働省
- 学校環境衛生基準(令和8年2月27日文部科学省告示第35号の改正を反映したもの)/文部科学省
- 学校環境衛生(学校環境衛生基準の一部改正について)/文部科学省
- お役立ちQ&A「とびひ」/日本小児皮膚科学会
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