子どものお絵かきの発達段階と声かけ|なぐりがきから頭足人まで、年齢の目安と親の関わり方
対象の目安: 1〜6歳ごろ

「これ何を描いたの?と聞いてはいけないって本当?」「丸から手足が生えた人の絵はいつごろ?」「上手に描けるように教えたほうがいい?」。お絵かきは1〜6歳の家庭がほぼ必ず通る場面なのに、関わり方の正解が見えにくいテーマです。この記事では、描画の発達段階の一般的な目安と、その時期に合った声かけ・環境づくりを整理しました。年齢はあくまで目安で、育ちのペースには大きな個人差があります。
お絵かきの発達段階|年齢の目安早見表
まずは全体の流れを表で確認します。この順番は多くの子に見られますが、移行の時期は子どもによって大きく違います。
| 年齢の目安 | 絵の様子(目安・個人差あり) | 関わり方のヒント |
|---|---|---|
| 1歳前後〜 | なぐりがき。紙をたたく点、往復する線から、ぐるぐる線へ | 描いてよい場所と時間を用意する。線が出たことを一緒に喜ぶ |
| 2歳ごろ | 縦線・横線・渦巻きが加わり、閉じた円が描けるようになる | 隣で大人も描く。指導はせず同じ高さで楽しむ |
| 2〜3歳ごろ | 描いたものに名前をつける「意味づけ(命名)」が始まる | 大人が名前を当てにいかない。子どもの言葉を受け止める |
| 3〜4歳ごろ | 丸から直接手足が出る「頭足人」が現れる(前図式期) | 見たとおりではなく「知っていること」を描いている段階と理解する |
| 4〜5歳ごろ | 胴体がつき、地面を示す線(基底線)が出てくる | 描いた場面の話を聞く。大きさの不ぞろいは直させない |
| 5〜6歳ごろ | 出来事を並べて描き、色と形の対応が進む | 工夫した点を具体的に言葉にして返す |
なぐりがき期|線が出ること自体がうれしい
はじめの描画は「絵」ではなく、腕を動かした軌跡です。近畿大学九州短期大学の竹永・塙による事例研究では、0歳11か月で紙をたたいた点と線から始まり、1歳6か月ごろに往復する線、1歳8か月ごろに円を描く線が加わる様子が記録されています。動かせば跡が残るという発見そのものが楽しみな時期です。
意味づけ(命名)期|「ママ」と言い出す
2〜3歳ごろになると、偶然できた形を指して「ママ」「わんわん」と名前をつけ始めます。描くものを先に決めているのではなく、描いたあとで意味が生まれるのが特徴です。あるものを別のもので表す力が芽生えたサインとされ、ことばの発達とも重なります。
頭足人と前図式期|丸から手足が生えるのは自然なこと
3〜4歳ごろ、大きな丸に目や口が入り、そこから直接手足が伸びた人が現れます。これが「頭足人」です。胴体を描き忘れているのではなく、印象の強い部分から描かれた結果と考えられています。前述の事例研究でも、3歳1か月ごろに顔と手足の要素が現れ、3歳6か月ごろに明確な頭足人が描かれています。「体がないよ」と指摘する必要はありません。
基底線と図式期へ|地面の線が出てくる
4歳前後になると、紙の下のほうに地面を示す線(基底線)が引かれ、物と物の関係が整理されはじめます。同じ事例研究では4歳0か月ごろに基底線、4歳8か月ごろに胴体のある人物が確認されました。一方でローウェンフェルドの段階表は、明確な空間概念としての基底線を様式段階(7才〜9才)の特徴に位置づけています。早く出る子もいれば学童期に入ってからの子もいる、という幅のあるものと考えてください。
「最初の明確な空間概念:基底線」の記述は、佐賀県教育センター公開のPDF「ローウェンフェルドが示す発達段階の概観」の様式段階(7才〜9才)の欄にあります。
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声かけ|「これ何?」は悪者ではない
「何を描いたの?と聞いてはいけない」という話を耳にしますが、問題になりやすいのは質問そのものより、大人が先に答えを決めてしまうことです。
- 1
夢中のときは声をかけない
黙々と描いているときは静かに見守り、集中が切れたときや子どもから話しかけてきたときに応じます。 - 2
名前を当てにいかない
「タコ?」と聞けば「タコ」と答えます。あとから同じ絵を「ママ」と言うこともあります。名前を挙げずに「これ、なあに?」「何をしているところ?」と開いた形で尋ねるほうが、子どもの言葉が出やすくなります。 - 3
見えている事実を言葉にする
「ここ、たくさん描いたね」「赤をいっぱい使ったね」など、目に見えることをそのまま返します。評価ではないので、子どもも受け取りやすい言葉です。 - 4
出来ばえより過程を認める
「最後まで塗ったね」と取り組み方に触れます。5〜6歳ごろは「かごの高さまで描いたんだね」のように具体的な工夫を拾うと伝わります。
メモ
幼稚園教育要領(平成29年3月告示)の領域「表現」でも、「幼児の自己表現は素朴な形で行われることが多いので、教師はそのような表現を受容し、幼児自身の表現しようとする意欲を受け止め」ること、「表現する過程を大切にして自己表現を楽しめるように工夫すること」が示されています。家庭でも同じ姿勢がそのまま役立ちます。
避けたいのは、上手・下手の判定と、見本どおりに描き直させることです。とくに描いている最中の修正指示は、意欲をそぎやすいので控えめにしましょう。
描くことを楽しむ環境づくり
やる気は「気持ち」より「環境」で変わります。準備のハードルを下げるほど、お絵かきの回数は自然に増えます。
- 紙は大きめに。1〜2歳は腕全体を動かすので、模造紙やカレンダーの裏など広い面が向きます
- 描く場所を決める。床に養生シートやレジャーシートを敷き、汚してよい場所にすると叱る回数が減ります
- 画材は数本のクレヨンを浅い箱に入れ、手の届く定位置に置くだけで十分です
- 落書きしてよい面をつくる。壁に貼った模造紙やホワイトボードなど、許される場所があると壁の落書きは減らせます
- 服はスモックや汚れてよいTシャツに。片づけまで短時間で終わる設計にすると、親も気楽に付き合えます
ヒント
「自由に描いていいよ」は、かえって何を描けばよいか迷わせることがあります。「一緒に描いてみようか」と隣で大人も描き始めるほうが動き出しやすく、指導ではなく共同作業の空気をつくれます。
画材の安全|口に入れる時期は表示と見守りを
まだ口に入れたりかじったりする時期は、素材と対象年齢の表示を先に確認しましょう。
画材を用意するときの確認ポイント
- パッケージの対象年齢表示を確認した(年齢に満たないものは使わない)
- STマークなど、第三者検査に合格した表示があるか見た
- 小さく折れた破片が口に入らないよう、太めで折れにくいものを選んだ
- 使う前後に手の届かない場所へ片づける習慣にした
- 使っている間は同じ部屋で見守るようにした
STマークは、一般社団法人日本玩具協会の玩具安全基準(ST基準)に第三者検査機関で合格したおもちゃに付けられるマークです。同協会が1971年に創設した制度で、機械的安全性・可燃安全性・化学的安全性の3分野を検査します。また食品衛生法では、器具・容器包装やおもちゃに規格・基準が定められ、規格に合わない原材料の使用などが禁止されています(所管は消費者庁)。
注意
表示のある製品でも、口に入れてよいものではありません。小さな部品や折れた破片は誤飲・窒息につながる可能性があるため、乳幼児のいる家庭では使用中の見守りと使用後の片づけを習慣にしてください。誤飲が疑われるときや、様子がいつもと違うときは、自己判断せず小児科やかかりつけ医、必要に応じて救急に相談しましょう。
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描かない子、興味がない子への関わり
お絵かきに向かわない子もめずらしくありません。関心の向く先は子どもによって違い、外遊びや積み木、ごっこ遊びでも同じ力が育ちます。
無理に座らせるより、次のような入口のほうが続きやすいです。
- 大人が楽しそうに描いている姿を見せる(誘わない)
- クレヨン以外の道具に変える(水で描ける筆、スタンプ、シール、砂や泥に指で描く)
- 描く前に体験を増やす。心が動く出来事があると、描きたい気持ちが出やすくなります
- 描かない日は無理をしない。粘土やはさみなど、手を使う別の遊びに切り替える
絵から気持ちを読み取りすぎない
「黒ばかり使うのは不安の表れ?」と心配になることがありますが、その日たまたま手に取った、太くて描きやすかった、といった単純な理由も多くあります。1枚の絵だけから心理状態を判断することは、専門的な訓練を受けた人でも慎重に行うものです。家庭で決めつける必要はありません。
ただし、食欲や睡眠、園での様子など絵以外にも気になる変化が続くときは別です。絵の解釈にこだわらず、園の先生や自治体の子育て相談窓口、かかりつけの小児科に相談してみてください。
作品の残し方
増え続ける作品を全部は残せません。段階の変化がわかる1枚を選ぶと、見返したときに成長が伝わります。
- 描いた日付と、子どもが言った言葉を裏に鉛筆で書いておく
- 段階の節目(はじめてのなぐりがき、はじめて閉じた円、はじめての頭足人)は優先して残す
- 4歳以降は本人に「どれを残す?」と選ばせる。選ぶこと自体が振り返りになります
- かさばるものは写真に撮ってまとめる。しばらく家族の目に入る場所に飾ってから手放すと、次への意欲につながります
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よくある質問
頭足人はいつごろ描きますか。描かないまま進んでも大丈夫?
上手に描けるように教えてもいいですか?
同じ絵ばかり何十枚も描きます。やめさせるべき?
絵に名前をつけたあと、次の日には別の名前になります。
まとめ
お絵かきの上達は、教えて伸ばすものというより、描く機会が積み重なった結果として現れます。年齢の目安は地図として持ちつつ、名前を当てず、出来ばえを評価せず、描いた事実と過程を言葉にする。発達には個人差があるので、比べて焦らず、気になることがあれば園や小児科に相談してください。
出典・参考
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