国民年金の育児免除制度が2026年10月スタート|自営業・フリーランスの子育て家庭が知っておくこと
対象の目安: 妊娠期〜1歳未満の子を育てる家庭(国民年金第1号被保険者)

会社員が育児休業を取ると、その間の社会保険料は免除されます。一方で、自営業やフリーランス、学生といった国民年金第1号被保険者には、これまで育児を理由にした保険料免除の仕組みがありませんでした。産後すぐで収入が落ちている時期にも、月々の保険料は変わらず届く。そこに手当てをするのが、2026年(令和8年)10月から始まる「育児免除制度」です。この記事では、日本年金機構と厚生労働省の資料をもとに、誰が対象で、いつからいつまで免除され、どう申請するのかを整理します。
育児免除制度とは
育児免除制度は、自営業・フリーランス等の育児期間中の経済的な給付に相当する支援措置として創設されました。根拠は「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第47号)で、2024年(令和6年)6月12日に公布され、これにより国民年金法が改正されています。施行日は2026年(令和8年)10月1日です。
対象は、子を養育する国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者、農業者、学生、無職の方)の実父母・養父母です。「子を養育する」といえるための要件は、子と身分(親子)関係が継続していること、子と住民票上の同一住所であること、そして子が生存していることの3つで、所得要件はありません。子の範囲は法律上の親子関係がある実子および養子で、特別養子縁組の監護期間にある子、養子縁組里親に委託している要保護児童も含まれます。
国民年金保険料は1か月あたり17,920円(令和8年度)です。仮に12か月分が免除されると、単純計算で年間21万円を超える負担が軽くなることになります。
自分はどれ?被保険者の種別で扱いが違う
まず確認したいのが、自分がどの被保険者なのかです。育児期間の保険料の扱いは種別によってまったく違います。
| あなたの働き方 | 年金の種別 | 育児期間の保険料の扱い | 手続きをする人 |
|---|---|---|---|
| 自営業・フリーランス・農業・学生・無職など | 第1号被保険者 | 2026年10月から育児免除(子が1歳になるまで・所得要件なし) | 本人が申請 |
| 会社員・公務員など厚生年金の加入者 | 第2号被保険者 | 産前産後休業・育児休業等の期間は厚生年金保険料等が本人分・事業主分とも免除(育児休業等は満3歳未満の子が対象) | 事業主が年金事務所等へ申出 |
| 第2号被保険者に扶養されている配偶者 | 第3号被保険者 | もともと個別に保険料を納める必要がない。育児免除の対象外 | 手続き不要 |
第2号被保険者にはもう一つ、時短勤務などで報酬が下がったときのための「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」があります。3歳未満の子を養育する期間の各月の標準報酬月額が養育開始月の前月を下回る場合に、従前の高い標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算する仕組みで、対象期間は養育開始月から子の3歳の誕生日のある月の前月までです。こちらは自動では適用されず、「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」を事業主経由で提出する必要があります。産休・育休から時短で復帰する予定があるなら、勤務先に確認しておきたいところです。
免除される期間はいつからいつまで
同じ「1歳まで」でも、実母と実父・養父母では数え方が違います。実母には先に産前産後免除があるためです。
実母の場合
産前産後免除期間に引き続く9か月間が育児免除期間になります。産前産後免除の4か月と合わせると、最大13か月間です。日本年金機構は、子の出産(予定)日が令和9年5月1日の場合、令和9年8月から令和10年4月までの9か月間が育児免除期間にあたる、という例を示しています。
実父または養父母の場合
子を養育することとなった日の属する月から、1歳になる誕生日の前月までの最大12か月間です。出産日が令和9年5月1日なら、令和9年5月から令和10年4月までの12か月間が該当します。
制度が始まる時点ですでに子がいる場合
2026年10月より前から子を養育していて、施行時点で子が1歳未満というケースもあります。この場合は、令和8年10月1日以降の月分が免除の対象になります。日本年金機構は、子の出産日が令和8年1月1日の場合、実母・実父/養父母のいずれも令和8年10月から令和8年12月までの3か月間が育児免除に該当する、という例を挙げています。
メモ
育児免除期間中に第1号被保険者の資格を喪失して再取得した場合(たとえば途中で就職して厚生年金に入った場合)、第1号被保険者でなかった期間は育児免除期間から除かれます。また、育児免除期間中に別の子の産前産後免除期間に該当したときも、その期間は育児免除期間から除かれます。上の子と下の子の期間が重なる家庭は、窓口で自分のケースを確認してください。
産前産後免除との違いと関係
産前産後期間の免除制度は2019年(平成31年)4月に始まった先行の仕組みで、出産した第1号被保険者の実母が対象です。免除期間は出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は3か月前から6か月間)。届出は出産予定日の6か月前から可能で、出産後も届け出られます。
育児免除は、この産前産後免除が終わったところから続く形で設計されています。実母にとっては「産前産後の4か月 → 育児免除の9か月」という二段構えになり、実父・養父母は産前産後免除がないぶん、出産月(養子縁組月)から12か月が育児免除になる、という整理です。どちらの制度も所得に関係なく利用でき、免除された期間は保険料納付済期間として扱われます。なお日本年金機構は、施行前から子を養育している実母のケースの説明で「産前産後免除期間(4カ月または6カ月)に引き続く9カ月間」と記載しています。多胎妊娠で産前産後免除が6か月になる場合は、育児免除の9か月と合わせて最大15か月間という計算になります。
「免除」でも将来の年金は減らない
ここが一番大事なポイントかもしれません。国民年金には所得が低い方向けの申請免除や納付猶予、学生納付特例がありますが、これらは年金額の扱いが異なります。全額免除の期間について受け取れるのは保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)ですし、納付猶予や学生納付特例の期間は受給資格期間には数えられても、年金額の計算には含まれません。
これに対して育児免除は、免除された期間が保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。保険料を納めた場合と同じ扱いになるので年金額が目減りすることはなく、あとから追納する必要もありません(追納制度は、免除・納付猶予・学生納付特例の承認を受けた期間の保険料を後から納める仕組みです)。名前は同じ「免除」でも中身がまったく違います。死亡一時金や外国人の脱退一時金の支給要件でも、保険料納付済期間として算入されます。
育児免除に関しては、その心配は当てはまりません。むしろ、すでに保険料を納付している期間や、免除・納付猶予、学生納付特例が承認されている期間についても、届出をすれば育児免除期間として取り扱われます。すでに納めた分の保険料は充当または還付されます。学生納付特例中に出産・育児をしている方は、届け出ることで「年金額に反映されない期間」が「反映される期間」に変わる可能性があるということです。
申請のしかた
- 1
自分と配偶者が第1号被保険者かを確認する
会社員・公務員(第2号)や、その扶養に入っている配偶者(第3号)は育児免除の対象外です。夫婦ともに第1号被保険者なら、ふたりとも別々に対象になります。ひとりだけ手続きして終わりにしないよう気をつけてください。 - 2
電子申請か窓口かを決める
日本年金機構のリーフレットは、マイナポータルからスマートフォンで24時間365日電子申請できると案内しています。お住まいの市(区)役所または町村役場の国民年金担当窓口、郵送でも手続きできます。 - 3
必要書類をそろえる
電子申請なら基本的に書類を添える必要はありません。紙の届書で手続きする場合は「産前産後免除該当届/育児免除該当届・終了届」とマイナンバーカードの写し等が必要になります。 - 4
届出後の通知と納付書を確認する
免除が反映されると、その月分の保険料の扱いが変わります。すでに納付済みの分は充当または還付になるため、口座振替やクレジットカード納付をしている方は、通知の内容と引き落としの状況を照らし合わせておくと安心です。
ヒント
育児免除の届出には期限(時効)が設けられていません。届書の受付・受理は市区町村による法定受託事務ですが、日本年金機構(年金事務所)による受付・受理も可能とされています。産後で手続きどころではなかった、制度を知らなかった、という場合でも諦めずに窓口へ相談してください。
免除期間中の付加保険料・国民年金基金
保険料が免除されると、上乗せの年金づくりも止まってしまうのか。ここも気になるところですが、育児免除期間中も付加保険料(月額400円)を納付することができ、国民年金基金への加入も可能とされています。老後の上乗せを積み上げてきた方が、育児期間だけ穴が空くという事態にはならない設計です。
一方で、任意加入被保険者の期間は育児期間免除の適用外です。60歳以降に任意加入して受給額を増やしている方などは、扱いが変わる点に注意してください。
あわせて読みたい
子ども・子育て支援金制度とは|2026年4月開始で子育て世帯に何が変わる?
よくある質問
里帰り出産などで、子と住民票の住所が別になっていても対象になりますか。
免除された分は、あとから追納する必要がありますか。
口座振替や前納をしています。すでに納めた分の還付はいつ受け取れますか。
免除された月の保険料は、確定申告の社会保険料控除に使えますか。
まとめ
育児免除制度は、これまで育児中の保険料軽減が受けられなかった国民年金第1号被保険者にとって、初めての恒久的な仕組みです。所得に関係なく使えて、免除された期間は年金額にもきちんと反映される。使わない理由が見当たらない制度なので、対象になりそうなら忘れずに届け出たいところです。
制度開始前に確認しておきたいこと
- 自分と配偶者が国民年金第1号被保険者かを確認した(夫婦とも第1号なら二人分の手続きが必要)
- 子の生年月日から、自分の育児免除期間がいつからいつまでになるか見当をつけた
- 実母は産前産後免除の届出が済んでいるかを確認した(未提出なら先に手続きする)
- マイナポータルにログインできる状態か、マイナンバーカードの保管場所を確認した
- 口座振替・前納をしている場合の還付や充当の扱いを、窓口で確認する準備をした
- 会社員の配偶者がいる場合、勤務先での産休・育休の保険料免除や養育期間の特例申出も確認した
制度の細部や自分のケースに当てはまるかどうかは、お住まいの市区町村の国民年金窓口、または年金事務所で確認するのが確実です。この記事の金額は令和8年度の値で、保険料は年度ごとに改定されます。制度の運用も今後の通知や様式の公開で具体化していくため、手続きの前には日本年金機構の特設ページで最新情報を確認してください。
あわせて読みたい
乳幼児健診の内容と当日の流れ・準備|1歳6か月児健診・3歳児健診で見ていること
出典・参考
- 令和8年(2026年)10月から国民年金保険料の育児免除制度が始まります!/日本年金機構
- 育児免除制度 周知リーフレット/日本年金機構(PDF)
- 国民年金第1号被保険者の育児期間における保険料免除(育児免除)制度について/厚生労働省年金局事業管理課(令和7年度全国こども政策主管課長会議資料・PDF)
- 国民年金保険料の産前産後期間の免除制度/日本年金機構
- 厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)/日本年金機構
- 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置/日本年金機構
- 国民年金保険料/日本年金機構
- 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度/日本年金機構
- 国民年金保険料の学生納付特例制度/日本年金機構
- 国民年金保険料の追納制度/日本年金機構
- No.1130 社会保険料控除/国税庁
関連する記事
子ども・子育て支援金制度とは|2026年4月開始で子育て世帯に何が変わる?
2026年4月に始まる「子ども・子育て支援金制度」を分かりやすく解説。医療保険料への上乗せのしくみ、支援金率0.23%の目安、児童手当の拡充や妊婦のための支援給付など使われる事業、家計への影響、手続き窓口を、こども家庭庁の情報をもとに中立にまとめます。
東京都018サポートとは|対象・申請方法・支給時期をわかりやすく解説
東京都が都内在住の0歳から18歳の子供に月額5,000円(年間最大60,000円)を支給する「018サポート」を解説。所得制限なしの対象条件、マイナンバーカード・オンラインでの申請方法、年3回の支給時期と申請期限、転入・転出時の扱いまで公式情報をもとに整理します。
乳幼児健診の内容と当日の流れ・準備|1歳6か月児健診・3歳児健診で見ていること
市町村が行う乳幼児健診の根拠と、1歳6か月児健診・3歳児健診で確認される項目を一次情報から整理。当日の持ち物と流れ、問診票の書き方、ぐずったときの受けとめ方、「様子を見ましょう」の意味、5歳児健診の広がり、受け忘れ・引っ越し時の考え方まで。


