子どもの利き手はいつ決まる?左利きを無理に直さないほうがよい理由と生活の工夫
対象の目安: 1〜6歳ごろ

「クレヨンを左手で持つことが多いけれど、このままで大丈夫?」「右手に持ちかえさせたほうがいいのかな」——子どもが物を使い始めると、利き手が気になり出す保護者は少なくありません。かつては左利きを右利きに直す家庭も多くありましたが、いまは考え方が変わってきています。この記事では、自治体の子育て相談や小児科医、脳の専門家による解説をもとに、利き手がはっきりしてくる時期の目安、左利きの割合や遺伝・環境との関わり、無理な矯正をすすめない理由、そして左利きの子が過ごしやすくなる生活の工夫を、やさしく整理します。利き手の育ちには大きな個人差があります。気になることがあるときは、決めつけず、健診や相談窓口を頼ってください。
利き手はいつ決まる?——目安は4〜6歳ごろ
赤ちゃんのころは、右手も左手も同じように動かして遊びます。利き手は生まれてすぐにはっきりするものではなく、成長のなかで少しずつ定まっていきます。
浜松市の子育て情報サイト「ぴっぴ」の相談回答では、2歳ではまだ利き手は決まっておらず、4歳ごろまでは両手を一緒に使ったり交互に使ったりすること、そしてどちらかの手を優位に使い、もう一方が受け身になっていくのが4歳から6歳ごろとされています。つまり「利き手がはっきりしてくる」のは、就学が近づく時期というイメージです。
メモ
発達の目安として、ビーズにひもを通す・はさみを使う・ボタンをかける・ふたを開ける・ひもを結ぶといった細かい手の動き(微細運動)は、年齢とともに少しずつできるようになっていきます。利き手が定まる時期も、こうした手指の育ちと重なりながらゆっくり進みます。あらわれ方には大きな個人差があるので、月齢や周りの子と比べて焦る必要はありません。
途中で「両利きの時期」を行き来することも
利き手は、一直線に決まっていくわけではありません。北見市の秋山こどもクリニックの解説では、2歳ごろにいったん右利きらしさがはっきりしてきても、3歳前後にもう一度両手を使う時期を経て、4歳ごろにやっと利き手が固定してくるという古典的な研究(ゲセルらの発達研究)が紹介されています。
- 1
乳児期:両手を同じように使う
左右どちらの手も使って、なめたり握ったりしながら手を育てていきます。この時期に「どちらか」を決める必要はありません。 - 2
1〜2歳ごろ:よく使う手が見えることも
スプーンやクレヨンなど、集中して細かい作業をするときに、よく使う手のかたよりが見えてくることがあります。ただしまだ確定ではありません。 - 3
3歳前後:ふたたび両手を使う時期
いったん見えたかたよりが、また両手を使う時期に戻ることもあります。行きつ戻りつしながら育つのが自然です。 - 4
4〜6歳ごろ:利き手がはっきりしてくる
片方の手が優位になり、もう一方が支える役割へ。この時期に利き手が見えてくることが多いとされます。
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左利きの割合と、遺伝・環境の関わり
左利きは決してめずらしいものではありません。脳内科医の加藤俊徳氏が監修する記事(講談社「コクリコ」)によると、左利きは世界の人口の約1割(約10%)とされています。クラスに数人はいる、ごくありふれた個性のひとつです。
利き手がどう決まるかについては、生まれ持った体質的な要因が関わると考えられていますが、そのしくみはまだ完全には解明されていません。両親や家族に左利きがいると左利きの子が生まれやすい傾向があるとされ、遺伝的な要因が関係すると考えられています。一方で、日常のなかで自然に選ぶ手や、周囲の道具・環境も、どちらの手を使うかの現れ方に影響すると考えられています。
メモ
はっきりしているのは、左利きは「体質的な個性」であって、育て方のせいでも、しつけの失敗でもないということです。「自分の関わりが原因では」と気にする必要はありません。右利き・左利きは優劣ではなく、その子の自然な育ちのひとつです。
無理に直さないほうがよい理由
ひと昔前は「左利きは右に直すもの」という考えが根強くありました。しかし現在は、無理に利き手を矯正するのではなく、その子の利き手を伸ばしていくという考え方が主流になっています。
浜松市「ぴっぴ」の相談回答でも、無理に矯正することは子どもにとって大きなストレスになることがあり、いまは利き手を伸ばすという考え方が主流だとされています。生まれ持った使いやすい手を、頑張ってもう一方に変えさせようとすると、次のような負担につながることがあります。
注意
無理な矯正で心配されるのは、たとえば次のようなことです。
- 「うまくできない」経験が続き、自信をなくしたり、書く・作ることが苦手意識につながる
- 本来は左手のほうがやりやすい作業を、我慢して続けるストレスがかかる
- 右と左の使い分けに混乱が生じ、かえってぎこちなくなることがある
大切なのは「どちらの手か」よりも、子どもが安心して、のびのびと手を使えることです。
ヒント
とはいえ、家庭の考え方や、道具・場面によっては「右手も使えると便利」という場面もあります。その場合も、叱ったり持ちかえを強制したりするのではなく、「こっちの手でもやってみる?」と遊びのなかで軽く誘う程度にとどめ、いやがるなら無理じいしないのが基本です。あくまで本人のペースを尊重します。
無理な矯正が子どものストレスになりうること、現在は利き手を伸ばす(直さない)という考え方が主流であることは、浜松市子育て情報サイト「ぴっぴ」の相談回答を参照しています。
左利きの子の生活の工夫
左利きの子が過ごしやすくなるのは、本人を変えることではなく、道具や環境のほうを少し合わせてあげることです。今は左利き用の道具も手に入りやすくなっています。無理のない範囲で取り入れてみましょう。
- 1
はさみは左利き用を選ぶ
はさみは、右利き用と左利き用で刃の合わせ方が逆になっています。右利き用を左手で使うと刃が開いてうまく切れず、「切るのが苦手」と感じる原因になりがちです。左手で使うなら左利き用を用意すると、ぐっと切りやすくなります。子ども用は刃先が丸い・カバー付きなど安全設計のものを選ぶと安心です。 - 2
鉛筆・クレヨンは持ち方を強制しすぎない
左手で書くと、書いた文字を手が隠して汚れやすいなどの特徴があります。紙の角度を変える、手の下に手が触れても消えにくい濃さの筆記具を選ぶなど、ちょっとした工夫で楽になります。持ち方は理想を押しつけすぎず、まずは楽しく描けることを優先します。 - 3
定規は左利き用や左右両方の目盛りを
ふつうの定規は左から数字が増えるため、左手で線を引くと手で目盛りが隠れがちです。右からも読める左利き用の定規があると、線が引きやすくなります。 - 4
食具は本人の使いやすい手で
スプーンやフォーク、箸は、本人が持ちやすい手で持たせて大丈夫です。食事のときは、隣どうしでひじがぶつからないよう、左利きの子を左端の席にする・向かい合って座るなど、席の配置を工夫すると食べやすくなります。 - 5
用具の向きや置き場所を合わせる
工作や身支度のとき、道具を利き手側に置くだけでも扱いやすくなります。園や学校とも「左手を使う」ことを共有しておくと、席や道具の配慮につながります。
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「両利き」への向き合い方
「両手が使えたほうが得なのでは」と、両利きを目指したくなる保護者もいます。実際、幼児期に両手を協調させて使う経験は、手指の発達にとって大切です。浜松市「ぴっぴ」でも、両手を使うことが、将来お箸を持つ手とお茶碗を支える手のように、両手の協調した動きの発達につながると説明されています。
ただし、これは「無理に両利きに訓練する」という意味ではありません。利き手ではない手も、支えたり押さえたりする大事な役割があり、日常の遊びや生活のなかで自然に両手を使ううちに育っていきます。
メモ
利き手が右か左かを急いで決めさせたり、両利きにしようと特訓したりする必要はありません。ブロック・粘土・紙工作・ボール遊びなど、両手を使う遊びをたっぷり楽しむこと自体が、手の発達を後押しします。結果として利き手がどちらに落ち着いても、それがその子の自然な姿です。
はさみを使う・ボタンをかける・ひもを結ぶといった微細運動が年齢とともに発達すること、手指の発達に個人差があることは、LITALICO発達ナビ(医師監修)「微細運動とは?」を参照しています。
親の関わり方と、相談したい目安
利き手について家庭でいちばん大切なのは、「どちらの手か」を評価したり急がせたりせず、その子が安心して手を使える環境をつくることです。
家庭で意識したい関わり
- 利き手を決めつけず、本人が自然に選ぶ手を穏やかに見守る
- 持ちかえを強制したり、左手を使うことを叱ったりしない
- 「左手なんだね」とからかわず、まわりの大人も落ち着いて受けとめる
- はさみ・定規など、必要なところは左利き用の道具でサポートする
- 園や学校に『左手を使う』ことを共有し、席や道具の配慮を相談する
- うまくできないときは道具や環境を見直す(本人を直そうとしない)
利き手そのものは病気ではなく、相談が必須のものではありません。ただし、次のようなときは、健診の機会などに気軽に相談してよいものです。「これくらいで相談してもいいのかな」とためらう必要はありません。
メモ
次のような様子が気になるときは、1歳6か月児健診・3歳児健診や、かかりつけの小児科、市区町村の保健センター・子育て相談で伝えてみましょう。
- 手指の使い方や全身の運動発達に、ほかにも気になる遅れがある
- いったんはっきり定まった利き手が、急に反対の手に変わった
- 極端に一方の手を使わない・動かしにくそうにしているように見える
- 利き手のことで本人がからかわれ、つらそうにしている
健診は発達の様子を確認し、必要な相談先につないでもらえる大切な機会です。判断に迷うときは、自己判断で抱え込まず、専門家を頼ってください。
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よくある質問
利き手はいつごろ決まりますか?
左利きは無理に右へ直したほうがいいですか?
左利きは遺伝ですか?私の育て方のせいでしょうか?
両利きにしたほうが得ですか?特訓すべき?
左利きで困りやすいことは?どんな道具があれば安心?
園や学校には伝えたほうがいいですか?
まとめ
子どもの利き手は、生まれてすぐに決まるものではなく、両手を使う時期を行き来しながら、一般に4〜6歳ごろにはっきりしてきます。左利きは世界の約1割とされるありふれた個性で、育て方が原因ではありません。無理な矯正は子どものストレスや負担になることがあり、いまは利き手を直すのではなく伸ばす考え方が主流です。
子どもの利き手で押さえておきたいこと
- 利き手がはっきりするのは一般に4〜6歳ごろ。途中で両手を使う時期もあり、個人差が大きい
- 左利きは世界の約1割。生まれ持った個性で、育て方が原因ではない
- 無理な矯正はストレスや負担に。今は『直さず伸ばす』が主流
- はさみ・定規・食具などは左利き用や置き方の工夫でサポートする
- 両利きの特訓は不要。両手を使う遊びをたっぷり楽しむことが手の発達を助ける
- 発達の遅れが気になる・一度定まった利き手が急に変わったときは、健診や小児科へ相談を
利き手はその子の自然な個性のひとつです。「どちらの手か」を気にしすぎず、安心して手を使える環境を整えてあげることが、いちばんの応援になります。気になることがあれば、一人で抱え込まず、健診や保健センター、かかりつけ医に気軽に相談してみてください。
出典・参考
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