非認知能力(社会情動的スキル)の育て方|幼児期の関わりで伸ばす、やり抜く力・協調性・自己肯定感
対象の目安: 1〜6歳ごろ

「これからは非認知能力が大切」という言葉を、育児雑誌やニュースで見かける機会が増えました。でも、「そもそも非認知能力って何?」「どうやって伸ばせばいいの?」と、もやっとしたままの方も多いのではないでしょうか。実はこの力、特別な教材や早期教育がなくても、毎日の遊びやおうちでの関わりの中で育っていくものです。この記事では、非認知能力とは何かをやさしく整理し、幼児期のおうちでできる関わり方と、やりがちな注意点をまとめました。
非認知能力とは|認知能力との違い
非認知能力とは、ひとことで言えば「テストの点数やIQのように数値では測りにくい、心や社会性に関わる力」のことです。がんばり続ける力、自分の気持ちをコントロールする力、人と協力する力、相手を思いやる力、そして「自分は大丈夫」と思える自己肯定感などがこれにあたります。
対して認知能力は、文字の読み書き、数の理解、記憶や計算など、数値やテストで測りやすい力を指します。よく「非認知能力 対 認知能力」という形で語られますが、この二つは対立するものではありません。むしろ、意欲ややり抜く力(非認知能力)があるからこそ、文字や数への興味(認知能力)がぐんと伸びていく、というように、互いに支え合って育っていく関係です。
学術の世界では、この力を「社会情動的スキル(Social and Emotional Skills)」と呼ぶこともあります。OECD(経済協力開発機構)は、社会情動的スキルを大きく次の三つの側面から整理しています。
| 側面 | 含まれる力の例 |
|---|---|
| 目標の達成 | がんばる力(忍耐力)、自己抑制、目標への意欲 |
| 他者との協働 | 社交性、他者への敬意、思いやり |
| 情動の制御 | 自尊心、楽観性、自信 |
メモ
これらの分け方はあくまで理解のための整理です。実際には、遊びの中で友だちと折り合いをつけたり、うまくいかなくても最後までやってみたりする場面で、いくつもの力が同時に育っています。むずかしい言葉に身構えず、「心の育ち全体を支えること」と考えると気が楽になります。
なぜ幼児期の関わりが大切なの?
非認知能力は生涯を通じて伸びていく力ですが、その土台がつくられるのが幼児期だといわれています。この時期の子どもは、身近な大人や友だちとの関わりの中で、「自分の気持ち」と「相手の気持ち」に少しずつ気づき、折り合いをつける経験を重ねていきます。
日本の幼稚園や保育所でも、こうした力は大切にされています。保育所保育指針や幼稚園教育要領では、育みたい力の一つに「学びに向かう力、人間性等」が挙げられ、粘り強く取り組む姿勢や、友だちと協力する姿勢を重視しています。また「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として、自立心・協同性・道徳性や規範意識の芽生えといった、まさに非認知能力にあたる姿が示されています。
ヒント
大切なのは、これらを「教え込む」ことではありません。子どもが安心できる大人のもとで、たっぷり遊び、たくさん気持ちを受け止めてもらう経験そのものが、非認知能力を育てる栄養になります。園に通っているなら、家庭は「安心して甘え、気持ちを立て直せる場所」であるだけで十分な役割を果たしています。
おうちでの関わり方|日常の中で育てる
非認知能力は、高価な教材や特別なドリルがなくても育ちます。むしろ、毎日のなにげないやりとりの積み重ねがいちばんの土壌です。今日からできる関わり方を、いくつかのポイントに分けて紹介します。
- 1
遊びこむ時間を大切にする
子どもが夢中で遊んでいるときは、集中力や「もっとやりたい」という意欲が育っている最中です。時間で急かしたり、口を出しすぎたりせず、まずはたっぷり遊びこめる時間と環境を用意しましょう。 - 2
見守る・待つ
できそうで、できない。そのもどかしい時間こそ、やり抜く力が育つ場面です。すぐに手を貸さず、「もう少しで届きそうだね」と見守り、子ども自身が「できた!」にたどり着くのを待ちます。 - 3
気持ちを言葉にして受け止める
「くやしかったね」「うれしかったんだね」と、子どもの感情に名前をつけて返してあげます。自分の気持ちを言葉で理解できるようになることは、感情のコントロールの第一歩です。 - 4
失敗を責めない
こぼした、壊した、うまくいかなかった。そんなときに叱るより、「どうしたらいいかな」と一緒に考えます。失敗しても大丈夫という安心感が、挑戦する意欲を支えます。 - 5
手伝いや役割を任せる
テーブルをふく、洗濯物を運ぶなど、小さな役割は「自分は役に立てる」という自己肯定感につながります。上手さより、任せて感謝を伝えることが大切です。
とくに親子の対話は、非認知能力を育てる大きな柱です。「今日は何が楽しかった?」「それでどうしたの?」と、答えを急がずに耳を傾けるだけで、子どもは自分の考えや気持ちを整理する練習ができます。正解を求めず、おしゃべりそのものを楽しむ姿勢が、意欲や表現する力を伸ばします。
おうちでの関わりチェック(できたらでOK)
- 子どもが夢中なときは、口出しせず見守れているか
- 気持ちを「◯◯だったね」と言葉にして受け止めているか
- 結果だけでなく、取り組んだ過程に目を向けているか
- 小さな手伝いや役割を任せ、ありがとうを伝えているか
- 親子でおしゃべりする時間を、少しでも持てているか
やりがちな注意点|先回り・評価しすぎ・比較
よかれと思ってした関わりが、かえって非認知能力の育ちにブレーキをかけてしまうこともあります。とくに次の三つは、多くの家庭で無意識に陥りやすいポイントです。
注意
一つ目は「先回りのしすぎ」です。転ばないように、失敗しないようにと大人が先に手を出すと、子どもが自分で試し、乗り越える機会が減ってしまいます。二つ目は「結果ばかりの評価」です。「上手」「すごい」だけを繰り返すと、うまくできることが目的になり、挑戦そのものを楽しめなくなることがあります。三つ目は「きょうだいや友だちとの比較」です。「◯◯ちゃんはできるのに」といった言葉は、自己肯定感を傷つけやすいので気をつけましょう。
こうした関わりを完全になくすのはむずかしいものです。大切なのは、気づいたときに「今のはちょっと先回りだったな」と立ち止まれること。褒めるときは「最後までがんばったね」「自分で考えたんだね」と、過程や工夫に目を向けると、子どもは安心して挑戦を続けられます。
メモ
育ちのスピードには、とても大きな個人差があります。同じ年齢でも、じっくり取り組む子もいれば、次々と興味が移る子もいます。他の子やきょうだいと比べて焦る必要はありません。その子の「昨日より少しできた」に目を向けることが、いちばんの応援になります。
遊びが育てる非認知能力|ごっこ遊びと外遊び
日常の関わりに加えて、遊びそのものが非認知能力を育てる豊かな場になります。とくにごっこ遊びと外遊びには、大切な意味があります。
ごっこ遊びでは、お店屋さんやお医者さんなど、自分ではない誰かになりきります。相手の立場を想像したり、「じゃあ次はこうしよう」とルールを相談したりする中で、共感する力や協調性、我慢する力が自然に育ちます。友だちと役割を分け合う経験は、社会性の土台そのものです。
外遊びや自然の中での遊びも見逃せません。木登りや水たまり遊びなど、思いどおりにならない自然を相手にすると、工夫する力や、挑戦してやり抜く力が引き出されます。体を存分に動かすことは、気持ちの切り替えや自己コントロールにもつながります。
保育において、心情・意欲・態度が育つ中でよりよい生活を営もうとする「学びに向かう力、人間性等」を育むことが重視されている点は、こども家庭庁が公開する「保育所保育指針解説」を参考にしています。
特別な道具はいりません。段ボールや空き箱、公園の落ち葉や石ころも、子どもの手にかかれば立派な遊び道具になります。大人は「こう遊びなさい」と決めすぎず、子どもの発想を面白がる立場でいると、遊びはぐんと豊かに広がります。
よくある質問
非認知能力を伸ばすには、何歳から始めればいいですか?
非認知能力を育てる教材やドリルは必要ですか?
認知能力(勉強)は後回しにしていいのですか?
たくさん褒めれば自己肯定感は育ちますか?
うちの子は集団遊びが苦手です。協調性は育ちますか?
まとめ
非認知能力(社会情動的スキル)とは、やり抜く力・自己コントロール・意欲・協調性・共感・自己肯定感といった、テストでは測りにくい心の力のことです。認知能力と対立するものではなく、両方が支え合って育っていきます。そして何より、特別な教材ではなく、毎日の遊びや親子の関わりの中で育つ力だという点が、いちばん伝えたいことです。
非認知能力を育てる関わりのまとめ
- 遊びこむ時間をたっぷり確保し、見守り・待つ姿勢を大切にする
- 気持ちを言葉にして受け止め、失敗を責めない
- 手伝いや役割を任せ、過程を認めて自己肯定感を支える
- 先回り・結果偏重の評価・他の子との比較に気をつける
- ごっこ遊びや外遊びなど、遊びそのものを豊かに楽しむ
肩に力を入れて「育てなきゃ」と身構えなくても大丈夫です。子どもが安心して遊び、気持ちを受け止めてもらえる毎日そのものが、非認知能力を育てています。まわりと比べず、その子のペースを信じて、日々のなにげないやりとりを一緒に楽しんでいきましょう。
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